第十話 ユズキ
「何てこと、『まりか』お姉さまからプレゼントが届いているなんて!光栄だわ、でもどうしましょう!」
私は『ユズキ』
ゲーム内では藍色のショートヘアに青の目、和装男装女子なんだけど、本当は中二女子。好きなアニメのキャラクターに寄せているの。
この「エンジョイ!アニマルアウトドア生活!」は二年くらいやり込んでいて、フレンドも私も高レベルで付き合い?も長い。
フレンドにはUSF《ユズキスペシャルフレンド》48と名付けていた。
最近、ゲームではフレンドにプレゼントを贈るというイベントが始まった。
プレゼントは簡単に手に入ると勝手に思い込んでいて、古くからのフレンドにさっさと送り、お返しを貰った。しかし、新しいプレゼントはなかなかゲットできず、送りあった回数にもよって出来ることが違うし、何より送ってないフレンドからプレゼントされても、お返しのプレゼントはなかなか手に入らない。
「ぐぬぬ、これって課金への道かしら。せっかく『まりか』お姉さまからプレゼントを頂いたのに!ああ、私が無視していないって、プレゼントを持ってないって説明出来たら!そして『まりか』お姉さまからプレゼントを頂いて光栄に思っていることをお伝えできれば!!」
『まりか』お姉さまは少し前にフレンド申請してきた、茶色のウエーブが編み込んである茶色い目の女の子。初めは「いいわ、お友達になって差し上げても。」って思っていたけれど、お姉さまのアウトドアエリアは私の見たこともないグッズで完璧にコーディネートされていた。明らかに私よりやり込んでいる。
このときから私は『まりか』お姉さまを特別扱いしているが、この気持ちを伝えるすべはない。顔も本名もわからないんだもの。
私にとってお姉さまは大事なフレンドなのに。
「
リビングでテレビのリモコンを片手に呆れたように兄がほざいた。
「兄さんには関係ないでしょ!私にUSF48がいるように、『まりか』お姉さまにもフレンドはたくさんいらっしゃるのよ!私のことなんて取るに足らないと思っていたから、プレゼントしたらかえって気を使わせてしまうと遠慮したのが失敗だったわ!ああ、次に手に入ったプレゼントは必ずお姉さまに!」
学校とかで会えれば釈明させてもらえるのに、いや、お姉さまが後回しになっていることに顔を見て謝ることができるのか…。
ゲームのスタッフの人よ、恨むからね……。
「やったー!プレゼントゲットした!」
イベントのご褒美にようやくプレゼントを一個ゲットする。
さあさあ、『まりか』お姉さまに……あれ、なんで送れないのかしら。
「何ですって、これ、五回以上やり取りした人にしか送れないプレゼントなの!」
ゲームのスタッフの人、もっと考えてください。
何人フレンドがいると思ってんの……。
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