第九話 ミキ

 え、あなた女の子だったの?

 男の子じゃなかったの?

 …悪いけど私、フレンドは全員男子って決めてるの。

 さようなら『akira』悪く思わないで…。


「フレンド解消!!!」


 いくらゲーム世界でもいきなりフレンド解消されたら相手は気分悪いだろうけど、『ミキ』の時くらいはわがままにさせて。それに一人くらい気がつかないでしょ。

 目立たない女子中学生の私は学校で結構気を使っていてる。

 校則も厳しいし、女子のクラスカーストが怖い。

 エンジョイ!アウトドア生活!では青いショートヘアにぱっちりした緑の瞳にピンクのウサギの着ぐるみ。我ながらどうなんだろうと思うけど、好きな格好をしても誰からも何も言われないのが最高!

 でもやっぱりフレンドを解消したのはちょっと気が咎める……。

 


 そんな私に罰が当たったのか強烈な試練が襲い掛かった。

 高校受験の学校の下見と願書提出を、同じ学年のよく知らない鈴木君って男子と二人で行かないといけなくなったのだ。

 だってその高校を受験するのは二人しかいないから…。

 方向音痴の私は誰かと一緒に行ってもらいたいくらいだけど、男子は苦手なのに。

 ゲームのフレンドは男子ばっかりだから、少しは慣れてもいいのに全然ダメ。


「初めまして、三木です。」

「ああ、君が三木さん。噂は聞いてるよ。」

 校門で待ち合わせた鈴木君は頭いい系だけど、目立ったことはしないメガネ男子だ。

 私についてどういう噂を聞いているかは気になるけど情けないことに聞けない。

 鈴木君の後ろについて電車に乗ったり歩いたりしていくと無事に高校にたどり着く。願書を提出してから高校をぐるりと一周して、あっさりと帰ってきた。


 鈴木君と別れ間際、私は一大決心をする。

 受験の緊張のあまり道を間違えたら大変。やはりここで鈴木君にお願いしないと。受験当日も一緒に行って欲しい。

 でもでも言いにくい、っていうか恥ずかしい。

 いえ、思い出すのよ、フレンド申請より理由は正当だもん。


「鈴木君、私方向音痴なの。受験の当日も一緒に行ってくださいっ!!」

 かなり叫びに近い声で彼の後ろから声をかけた。


 鈴木君はちょっと驚いたような顔をして振り返ると

「三木さんって大人しいって聞いてたのに、元気な人だったんだね。いいよ、当日も一緒に行こう。」


 こうして私は無事に受験会場にたどり着ける手段を手に入れた。

 やっぱりフレンドは全員男子にしておいてよかった。

 ありがとう、フレンドの人たち。

 そして一番初めに私にフレンド申請してくれた『ユズキ』君、感謝してます。

 高校生になったら男子のクラスメイトと普通に話せるように…なれるといいなあ。

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