第八話 akira

 俺は『akira』

 工業高校の柔道部で女子との接点がない部活のメンバー何人かで、たまたまスマホアプリゲームのアニマルアウトドア生活!を始めた。

 全員丸刈りでガタイはいいが、彼女がいる奴はいない。

 せめて友達でもと期待しても下心ありありのせいか、ゲーム内でフレンドにすらなってもらえない。なんでだろう。


「直樹、エンジョイ!アニマルアウトドア生活!やってるか?女子のフレンド出来た?」


 部活帰りに友達の直樹に聞いてみた。


「……あ、うん。」

「俺も全然ダメなんだ、って、お前、フレンド何人できたんだよ、俺だって大切な『ミキ』ちゃんと『きなこもち』ちゃんと『ゆうか』ちゃんの三人がいるんだぞ!」


 どうせ直樹も同じようなものだろう。


「さあ、五十人くらいかな。」

「へっ!五十人!どうやったんだよ!」


 唾を飛ばして詰め寄るオレに、直樹はなんてことないように教えてくれた。


「ゲームでは直樹じゃなくて『ナオ』って女の子にしたんだ。ゲーム内で流行のドレスを着せてフレンド申請しまくったのさ。女子は感覚の合う友達を増やしたいって思ってるだろうから。」

「なんてゲスな、いやナイスアイディア。俺の名前のakiraは男女両方いけるから、俺もそうするよ!」

「言っとくけど、これは絶対に相手を知ることができないゲームだからなりすましてるだけで、ちゃんとカヌー漕ぎの手伝いとかいいねを押すとか誠意をもって対応してるから。」

「わかってるって。」


 プラットホームのベンチで直樹は得意げにゲームのフレンド欄を見せてくれる。


「おお、かわいらしい女子がたくさん…。この紫のロングヘアの『ハッピー』さんはいいなあ。」

「だろ、『ハッピー』さんはいつも季節を先取りした着物を着てるんだよ。きっと二十代くらいのお姉さんだよ。」

「おまえの『ナオ』も外国のお姫様みたいだな。エメラルドのイヤリングなんてどうやって手に入れたんだよ。」

「………………。」

「もしかして課金したのか?」

「違う、ヴァルハラに富を積んだんだ!!」


 その夜、もちろん俺もヴァルハラに富をつんだ。

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