第六話 グリーン

さよならを言ったのは私だけど

あなた(『ハルト』)のことが好きだった

例え私(『グリーン』)のことは大勢の中の一人だとしても

見つめていられるだけで良かった――

 

あの日あなたからの何気ない(フレンドの)誘いがなかったら

こんな思いをすることはなかった

(ショップを)利用されるだけの関係でも

私はかまわないわ

そう思っていた

でも、もうお終い


ごめんなさい

あなたより素敵な人(『akira』)が現れてしまったのよ

もし、気がついたら許して

でも、気がつかないわね

私はたくさんの友達フレンドの一人

 

「緑川―!新しい曲の詩出来た?」

「出来たよ、我ながら傑作!」

「どれどれ、何このメルヘンチックなよくある感じのやつは。」

「何言ってんの、ロックな私たちのバンドにピッタリじゃん。ねえ、曲はガンガンにノレるやつにしてね。」


「緑川ってば一体どこから詩のアイディアを探してくるんだか。」

「そんなの日常生活のどこにでも転がってるわよ。」

「それもそうね。ところでスタジオで練習の後、居酒屋に行こうよ。」


 ゲームの中のグリーンも私だけど、現実世界の私も悪くない…ってか大好き!

 大学もサークルも友達も、毎日が楽しくて仕方ない!

 そんなわけで、ゲームはなかなか進まないけど、アニマルアウトドアはストーリーを進めるものではない。ゆっくり自分のペースで進めればいい。

 一緒くらいのレベルだったフレンドたちが次々レベル100を超えていくのにまだ私はレベル67。

 でも、『たかたか』さんは私よりゆっくりのレベル46。

 たかたかさんのアウトドアエリアに遊びに行ったことがあるけど、ほぼ初期のころに手に入れたアイテムが飾ってあるだけで、アバターの見た目もほとんど変わらない。結構毎日プレイしているのにレベルは上がってないし、たまにイベントで手に入る服に変わってるくらい。この人、ゲームで一体何しているのかしら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る