第五話 ハルト

でよ、我がしもべたち!」

 オレはゲーム面のショップのマークをタップした。

 よし、フレンドという名の我が僕たちの貢物を頂くとしよう。

 ショップに並ぶ、自分のゲーム内ではできない特産のフルーツを買いまくる。

 特産のフルーツはとても高く売ることができるし、アウトドアエリアでアニマルにあげると宝物をくれるので絶対に欲しい。さらに、どういう考えの人か知らないが、レアアイテムを定価以下で売っている人もいた。


「よし、次はオレのためにカヌーを漕いでもらおうか。」


 …………なんか最近、協力してくれる人が少ないのか、出発するのに時間がかかるな…………あれ、『グリーン』がフレンドからいなくなってる。なんで。

 そういえば『すもも』も『とうふ』もいなくなってた。


「最近、なんでかアニマルアウトのフレンドがいなくなっちゃうんだけど。」

 塾の帰り道に愚痴ったら、友達は呆れたようにオレの顔を見た。

「晴斗、もうすぐ高校受験なのにまだゲームやってんのか?」

「ちょっと気分転換にやってるだけだよ。」

「アニマルアウトドア生活!か。姉ちゃんもやってるけど、……晴斗、もしかしてフレンドに、いいねしてないんじゃないの。」

「え、気が向いたときはしてるけど……。」

「ちょっとゲーム画面、見せてみろよ。あーあ、これじゃあ……」


 友達はため息をついて次々と指摘してくる。


「このゲームで、いいねはこんにちはっていう挨拶だよ。フレンドの特産品を買いまくってるくせに、自分の所の特産品をショップに並べてないなんて。珍しいアイテムを見せびらかしたいけど売りたくないからって、桁が違うだろってくらい高く売ってるし。しかもなんだよ、このへんてこなお面、ずっとこれじゃあないだろうな。」

「…………。」

「イベントは出来るだけ、お互い様くらいは助けてる?」

「…………。」

「女子はよこしまなおじさんを警戒してるから、よくある外見のほうがいいって姉ちゃんが言ってたよ。まあうちの姉ちゃんの意見が参考になるかわからないけど、気になるなら少しは気を付けたら。」

「……とっても参考になったよ。」


 フレンドはゲームキャラクターじゃない。後ろには本当の人間がいる。

 名前も顔も知らないけど友達。これから出会うこともないだろう。

 でも、そんな関係もありだな。

 とにかく家に帰ったら速攻でいいねを押してショップの品物を入れ替えて外見を変えよう。フレンドの皆さん、ごめんなさい。

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