第四話 ハッピー

 ゲームガチ勢と年寄りの朝は早い。

 老眼鏡を掛け、スマホの電源を入れた。

 まだ朝の五時だけど、何人かのお友達はプレイしている。

 もう七十代なのに、こういうゲームにはまるとは。


 元々孫に、「おばあちゃんもやってよ。フレンドになって~」といわれて、エンジョイ!アニマルアウトドア生活!というスマホアプリのゲームに手を出した。

 これが、一人暮らしの年寄りの安否確認に使えると嫁に気づかれ、毎日数回プレーするように息子に言い渡された。

 孫の役に立つなら、そして息子夫婦が安心するならとやっているが、慣れてくると楽しいものだ。

『ハッピー』は、本名の幸子から孫が設定してくれたゲーム上の名前。

 ゲームの中の私の見た目は紫のロングヘアに目の中に星が入ってる。

 昔は少女漫画の主人公の目にはかならず星が入っていたから私も。

そして着物や浴衣をとっかえひっかえ着ている。

 この、服をたくさん持っていて、好きなだけ簡単に着替えられる、というのが気に入っている。現実世界では、今まで持っていた服が、ことごとく似合わなくなっている年齢で、本当に往生していた。

 フレンドが孫一人だと寂しいので図々しく、何人もフレンド申請した。

 いい人が多くて、あっという間にたくさんのお仲間が増えたのがとてもうれしい。

 新しくどなたかと友達になるなんて、ここ数年なかったことだから。


 大抵のお友達は「いいね」という挨拶を毎日してくれ、イベントの虫取りや魚釣りでお互いおすそ分けをする。

 その中に一人だけ、ちょっと私とは趣味が合わない人がいる。合わないのはこちらが年寄りだからかもしれないが、いいねは来ないし、イベントも手伝ってくれないし、いつも私のショップに出した特産品のグレープフルーツを素早く買っていき、後はなしのつぶての『ハルト』。変なアフリカのお面みたいなのをずっと着けている。着替え大好きな私からしたら理解できない。そんなにそのお面、気に入っているのかね。今どきの男子はそんなものかと思うが、他のフレンドの『カズ』はお洒落でマメに協力してくれるのに。孫は「気に入らない人はフレンド関係解消できるよ」と教えてくれたけど、そこまで嫌でもないから放っておこう。

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