第三話 カズ

「和也君、またそのゲームやってるの?」

「うん、三時になったからフレンドに挨拶のいいねをしないと。それで、カヌーを協力して漕ぐんだ。安井さんもやるといいのに。とっても面白いよ。」

「私はそういうのは続かないな、めんどくさがりだから。……明後日退院なんだから、ゲームはほどほどにね。体力付けて、小学校に行かないと。」

「はーい。」


 ボクは『カズ』

 本当の自分は病院のベットの上だけど、ゲームの「エンジョイ!アニマルアウトドア生活!」では海でも山でもどこへでも行ける、金髪のチャラ男なんだ。

 友達のタケシが一緒にやろうって誘ってくれて、クラスの子はほとんどフレンドになってくれた。長い入院生活でタケシ達が毎日「いいね」って励ましてくれたり、ボクのショップでムシや畑の収穫した野菜や果物を買ってくれたり、一緒にカヌーを漕いだり、ゲームをしてると一人じゃないんだってとっても慰められた。

 担任の先生も、たまに畑に水やりしてくれた。

 みんながボクのことをちょっとだけでも気遣ってくれているということが、ボクをどれだけ支えてくれたことか。

 そうそう、タケシが、女子にはチャラ男より王子様の方が人気だって言ってたから、かっこいい王子様に変身しようかな。全然知らない人だけど、『ちきこ』ってフレンドが今、かっこいい王子様だから真似してみよう。


 退院したら、パパとママと妹と本当のアウトドアに行くんだ。

 でも、ゲームは続けていこうと思っている。

 顔も名前も知らないフレンドが僕をどれだけ慰め、励ましてくれたことか。

 初めは知らない人に友達になってと頼む勇気がなくてもじもじしていた。

 でも、友達になってほしいといわれるのはとっても嬉しかったから、ボクからもたくさんフレンド申請をして五十人くらいフレンドができた。

 『ハッピー』ちゃんはいつも早朝から一緒にプレーしてた。

 もしかしたら、彼女もボクと同じように入院している女の子かもしれない。

 『ハッピー』ちゃんもボクと同じように元気になることを願って、今日もいいねを送る。

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