第二話 ちきこ
課長のやつ、いつもみんなに平等に仕事を割り振っているふりをしているけど、私気がついているんだからねっ!私や吉田さんにはちょっと面倒な案件を割り振って、後輩たちには簡単にできる仕事を回してるってこと!一度指摘してみたら、「えっ、たまたまだよ。」って言い訳していたけど、残業しないように私が高速で仕事を進めているそばで、のそのそと仕事をしている後輩たちを見ると腹が立つ。
大抵仕事が終わるのは全員同じくらいの午後五時でみんな残業なし。
課長、流石よ。市役所のお役人の鑑。
でも今日は思ったよりてこずって、みんなが帰る中まだ仕事をしている私。
「お先に失礼します。」
「千賀子、手伝うことある?」
「もうあと五分ちょっとで終わるから大丈夫よ。ありがとう、先帰って。」
本当は手伝ってもらいたかったけど、見栄を張ってなんとか一人で仕上げた。
課長、今度私がお茶当番の時は、布巾をゆすいだ絞り汁を湯呑に入れてやるから覚悟しな。
むかつきながらも仕事を終わらせて帰宅後、ご飯の後のお楽しみはゲーム。
何はともあれアニマルアウトドア生活!の世界でのんびりすること。
でも今日はのんびりできない。畑を耕し、魚を釣らなくては。
その前に私の『ちきこ』の外見を変えよう。
髪は赤にして、目は青のままでいいか。ぱっちりした目から、少し釣り目にして服はドレスからパンクなシャツとジーンズ、ちょっとごついブーツ。
イライラした日は見た目を全部変えることにしている。
うーん、いまいちね。やっぱりステキな王子様にしよう。この前手に入れた白いタキシードがいいわ。王子様が来てくれないなら、自分で王子様になればいいのよ!
フレンドたちに「いいね」をしてショップの商品をアップする。
私のフレンドはほとんど女の子なんだけど、特産品が私のマンゴーと違う、スターフルーツ目当てに『カズ』君という男子にフレンド申請をした。
フレンドになって気がついたんだけど、カズ君は一日中頻繁にログインしていて、こいつ何者なんだと気味が悪くなった。
堅気の仕事をしていたら、こんなにまちまちな時間に毎日ログインできまい。
まだ十代で学校に行ってるにしても早朝から深夜まで…。謎な男だ。
女かもしれないけど。
見た目はよく日に焼けたサングラスの金髪でチャラくてアロハシャツを着ている。「いいね」もしてくれるし、マナーが悪いとかはないけど、カヌーやイベントの協力、畑への水やりをしてくれる「足あと」が頻繁すぎでちょっと引く。
本人がどんな人か全く予想できない……。
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