第10話 風の妖精と契約
ドヤ顔してる妖精の話を要約すると、彼は風の精霊で、契約すると風魔法が使えるようになる、と言うこと。その歳で二つ属性があるのは確かに凄いけれど、魔術師になれば、ザラだし、今契約しておくと、魔術師になった時に凄い魔法が使えるようになるかも、って言う眉唾な話だった。
けれど、怪しくない?
そんなに凄いことを、私に言ってくる?自分から売り込みかけるかなぁ。
私が訝しんでいると、更にいまなら、特典がついてくるよ!と、どっかの通販番組みたいなことを言い出したので、念のためその特典と、売り込んでくる理由を聞いてみた。
特典は、今後私に悪意を向けてくるものがいたら排除してくれると言うもの。凄い、そんなことできるんだね。
で、理由は?
理由をきいて、反省したのは妖精さんでなくて、私の方だった。
彼は元々ここから随分はなれた山の奥地にいた妖精で、ある花から生まれた。
私が前に植物図鑑で、片っ端から植物を召喚していたのだけど、その時に一緒に召喚してしまったらしい。召喚されると、力を消耗してしまうらしく、この慣れない土地で暮らしていくには、誰かと契約しなければ、力を回復できず、生き延びることができないのだとか。
「環境の変化に慣れるまででいいからさ。」
申し訳なさそうに謝ってくるけれど、ごめんなさい、それは、私が悪い。
「ごめんね。いつまででも大丈夫です。」
やっぱり何かしら制約はあるのね。しかも、召喚した側でなくて、された側にあるなんて。
本当に、ごめんなさい。
知らなかったんです。
と、いうわけで私たちは契約することになった。この風の妖精さんは、割と強いらしくて、こっちの体が幼い時は負担がかかるから、魔力や、魔法の使い方を教えてくれるそうだ。
「マナーは、教えてやれないけど、魔法なら教えてやれるぞ。」
妖精さんに借りばかり、作るのは悪いな、と思ったけれど、お言葉に甘えることにした。
「そういえば、名前なんていうの?」
「僕の名前は、モダモだ。よろしく。」
「僕はルイだよ。こちらこそ、よろしくね。」
それから私は、モダモに魔力や魔法を教えてもらい、母にマナーを教えてもらい、セシルに6歳の身の振り方を、父とザリオ様にわからないことを教えてもらう日々を送った。
相変わらず、して貰うばかりで、悪いなと罪悪感はあったが、今後成長して、返していけばいいと腹を括った。
妖精さんはそのあと、力が回復してくると、他の妖精を紹介してくれた。モダモの姉貴分と言う大妖精と話をしたが、ワガママな駄々っ子と話しているようで、少々疲れた。彼女の名前は凄く長ったらしいので好きに呼んでくれ、といわれ、お花のようにきれいだから、はなちゃんはどう?と言うと、センスがないと叱られた。
でも、はなちゃんと呼ぶと返事をしてくれたからよしとした。
はなちゃんは、悪戯が原因で、上位の精霊にお叱りを受けているらしく、今は魔力がつかえないそうだ。
「何をやったの?」
「…知らなくていいことは世の中にたくさんあるんだよ?」
モダモはいつ聞いても、こう答えるから、言う気はないのだろう。
風の妖精と契約したことを、ザリオ様に報告したら、良かったね、と手紙が返ってきた。
え。それだけ?
戸惑いはしたものの、妖精と契約できたら、魔術師になるのに、かなり有利になるから、妖精と仲良くすると良いらしい。
まだ体に馴染みのない、風魔法を使いこなしたい一心で、侍女のマリンと、モダモと一緒に訓練をする。
7歳の誕生日と、見習いの試験は気づくともうそこまで、近づいてきていた。
魔術師になるには、何パターンか、方法がある。まずは、今からやろうとしてる、見習いになって、何年か経て昇進試験を受ける方法。あとは、魔術師の学校に通って、魔術師試験を受ける方法。そして、魔術師として働いた後に国に認めさせる方法。3つ目は、よっぽど自分の力に自信がないとできないやり方だ。
見習いになれなくても、学校から目指すと言う方法があるぞ、と落ちた時の言い訳みたいなことを言って、父はいつも慰めてくれるけれど、見習いになってからも、学校に行くと言う人もいるみたいだから、見習いとしての仕事と学校での授業は別物なのだ。
魔術師の学校にはザリオ様は関係しているのだろうか?
ザリオ様に直接教えを請えるなら、学校と言うやり方もアリ?
魔法を扱うとその面白さが勝ってしまって本来の目的を忘れてしまう。
私がネイリストになるためには、これからもいろいろなことを我慢しなくてはならない。
時間を粗末にしている場合ではない。
早く見習いになりたい。それだけのための2年間なのだから。学校はそれでもやっぱり知識が足りない、と感じたら考えよう。わからないことを教えてくれる人たちはたくさんいるのだから。
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