第7話 手紙が届きました

ザリオ様に送った手紙は、添削され、膨大な量の返事と、何冊かの本と共に、父より手渡された。


魔術師用の報告書の書き方と、冊子が入っていて、それは父に貰った研究者用のそれと様式はそれほど変わらなかった。



新しい本には私がこれからやろうとしていたことの注意が書いてあり、自分が思っていた嫌な予感が当たったことを思い知らされた。


いや、怖っ。

先に知っておいて良かった。


私はこれから、黒以外の色で魔法陣を作ればどうなるかを見たかったのだが、色によっては魔獣を引き寄せてしまう効果があるらしく、見習いは黒一色が望ましいと、あった。


魔除けの効果が一番高いのは黒だそうだ。僕が後から作った濃紺でも効果は同じらしい。せっかく時間をかけて作っても、効果が同じなら、簡単に作れる黒にするよね。


魔獣が色によって引き寄せられるなんて、聞いておいてよかった。

あれかな。虫が黄色い物に集まる、みたいな感じかな。


魔獣の種類に違いはあるのかな?

強い魔獣はこの色が好き、とか。


とりあえず実験を、と思いついて、我にかえる。魔獣が集まったとして、襲われたら、どうするんだ。

この実験は、残念だけど、私がもう少し強くなってからにしよう。


あと、家では私だけしかいなかった魔力の色が見える件は、ザリオ様も見えるらしい。


自分だけの特殊能力はなかなか信じられないけれど、ザリオ様も同じなら、と安堵する。


魔法陣の色については、今は諦めるとして、柄はどうだろう。今の紋様に落ち着く前は、象形文字みたいなのも、あったみたい。ふむふむ。

本には多分ザリオ様が、気になって調べたものがたくさん書いてあったが、見事に私が気になった箇所と似ていて、まさにピンポイントだったので、新たな疑問が。


ザリオ様って、転生者じゃないよね。

昔は私と同じ女で、とか?


いや、まさかね。


気を取り直して、本に戻る。


象形文字から、紋様に至る過程はわからないものの、紋様が、より魔力を込めやすかったから?

と言われている。

だって。


よくわからない。


元々は絵だったところから、文字になって、紋様になったのが魔力の込めやすさなら、絵で魔力を込めないものなら、ネイル用として使えるんじゃない?


私がしたいのは、ネイルであって魔術ではないのだから。今は便宜上、魔術師になろうとしているけれど、結局はネイルを安全に普及させたい、それだけだからね。


絵で魔法陣を描いてみて、というか、禁断症状で、(そんなのあるのかな)そろそろ普通の絵が描きたいので、前世で書いていたたとえば花とかを描いてみることにした。

筆は、お馬さんの毛を頂いて作ったもの。


透明な液体をベースに塗って、太陽の光に当てる。この前作ったカラーの中から薄いオレンジ?赤っぽいのを選んで付けてみる。可愛い。これだけでも可愛い。お花の形にして、真ん中に、違う色を落とす。花になった。また太陽の光に当てる。最後に透明な液体を薄くのばすと、また太陽にかざして、おわり。


左手の人差し指の爪にオレンジ色のお花が咲いた。


たったこれだけで、感動して涙ぐみそうになる。


あ、今魔法陣の実験中だったわ。

ふと、我にかえる。


爪を綺麗にしたことのある人はわかると思うけれど、嬉しいと人は何回も眺めてしまうよね。


私もそう。嬉しくて眺めていると、目の端に見えた。あれ、これあったっけ?

さっきまでこの場になかったものが現れた。


私が先ほど花を描いたのは、カラーの種類を見て、たまたまオレンジ色を選んだに過ぎず、実際この場にオレンジ色の花はなかったのだが。


急に今オレンジ色の花が大量に現れたのだ。


え。何これ。


小さなオレンジ色の花は、手をかざした箇所に増え続け、せっかく描いた最初の花を私は除去魔法で消さざるを得なかった。


これは、召喚と言うやつでは?

確かに魔法陣と言うと、召喚のイメージがある。


私がだした結論は、こうだ。

絵で魔法陣を書くと、絵に書いた通りの物が召喚されてしまう。絵が上手な人ならその物ズバリがでてくるのだが、多分絵が下手な人がいたのだろう。

何かわからないものが出てきてしまったため、絵をやめて、文字にしたのではないか。


どうだろう。


例えば、ウサギを書いたのに、クマが出てきたりしたらパニックだよね。普通の動物ならいいけれど、この世界、凶暴な種族もいるし。



また、手紙でザリオ様に聞いてみよう。


魔法陣は消えたものの、花はまだそこにあった。触れると、普通の花に見える。部屋から、植物図鑑を持ってきて開いてみると、あった。私が何も考えずに描いた花は希少種だった。


育て方は、どうしたらいいのだろう。


これも手紙に書かなくては。

とりあえず普通に水をあげればいいのかな。ズールさんに、言って、ここまで水をやってもらおう。


言いに行くと、ズールさんは目を丸くして、興奮していたが、育てたことがあるようで、お任せください、と胸を叩かれた。


はあ、ではお願いします。


私はよくわからないので、プロに任せた方が良いでしょう。


私はさっきまでの実験を忘れない内にと、ペンを手に取った。

















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