第3話 魔術師を目指そうと思います

父が私に協力的だったのは、私が魔術師になりたいのではないかと思っていたから。父自身、研究者として身を立てていた過去もあって、そんな道に進もうとしている我が息子を、止めようとはしなかった。私が三男だったこともある。


長男になにかあっても次男がいる。次男に何かあることなんて、可能性はゼロではないですが、あまりない。

戦争とかが起こらない限りは。


ルイは、私が目覚める前は、自分の意見を言うのが苦手だったようだ。

言いたいこともいわず、言わなきゃいけないことも言えず。


だから、私があれがやりたい、ここに連れて行ってほしい、などと主張するのは、周りの人にとって喜ばしいことだった。


私は紋様を見て、これが何の模様か当てられるまでになった。あと、私ならこう書くだろう、と勝手に自分なりの形を作ってみたりした。やはり前世に引きずられるのか、花、星、月の紋様が好きみたい。



そうしてるうちに、約束の、念願の液体が届いた。大きな瓶にたっぷり入っており、これなら何度も練習出来そう。ホクホクと笑顔で受け取り、私は顔を顰めた。


液体は黒ではなく、透明だった。

「黒ではないのですか?」

商会の方に尋ねる。

「ああ、あれも元はこの色です。この液体に魔力を流し込むと黒色に変化するのです。」


衝撃の事実が、ここに!

魔力を入れると黒くなる。

他の色は、どうやって作るの?


「どの魔力でも、黒になるのですか?」

私の問いに首を傾げる商人達。

「専門外で、わからないのですが、そう聞いております。」


私はがっくりきた。

けれど、さっきの方は専門外なので、わからない、と言った。


もしかしたら、専門の人ならではの抜け道があるかもしれない。


魔力の種類や質によっては、他の色がつく可能性だってある…はず。

なければ、詰んだことになる。

頑張るぞ!


私は気を引き締めた。


父は私がしようとしていることを興味深く見ていたが、同時に私にチャンスをくれた。


「宮廷で魔術師見習いの募集があるが、受けてみるか?」



受験資格は7歳~ですね。


「はい、やります!」

試験までは1年半程。

勉強は間に合うのだろうか。


その間、私はカラーをどう出すかの研究に明け暮れた。本をたくさん読んで、ズールさんや父にも、手伝ってもらうつもり。あと、隅っこからこちらをチラチラ気にしてるマシューも暇そうだから、呼んでこよう。


目標が決まると言うのは良いことだ。

ぼんやりとしてしかなかった未来が動き出した気がする。


まずは、魔力について勉強しなければいけない。


私が新たに知ったことは、爪に魔法陣を描いているのは一部の魔術師だけと言うこと。生半可な魔力の持ち主だと、体が耐えきれない。


だから、高い魔力をもち、その魔力を制御できる一部の魔術師にしか与えられない武器だと言う。


その一部の魔術師が魔力のコントロールを施しながら、他の人に魔法陣を与える行為はできるそうで、とりあえずここを目指そうと思う。

何かネイリストぽいよね。


私が家で頻繁に紋様の本を見ているので、母も少し紋様に興味が出たようだ。

しめしめ。

こうやって少しずつ垣根を取り除いて行こう。


父は私に研究者時代からの友人を家庭教師として、呼んでくれた。

最初にやったのは魔力量と質の計測。本来ならば、学園に入る前や、見習いになる前に調べるのだが、父は人脈をフルに活用した裏道から、計測器の使用許可を取り付けた。裏口と言うと不正ぽいので、裏道。要は同じだけど。


計測機の使い方は、計測機に魔力を流すことで量と質を計測する。せっかくなので、セシルから、アデルまでやってもらうことにする。人の魔力って気になる。


まずはセシル。魔力は強い方で、水属性。土属性も若干ある。いきなり二属性はすごいのでは?


マシューは、魔力量は普通よりはある方だが、強いとまではいかないぐらいで、属性は火。アデルは水属性。魔力はまだ3歳のため、すごく弱いらしい。そして、私、ルイは土と水の属性があり、セシルと違い、土が強い。私もまさかの二属性。魔力量も、家族の中では父の次に強く、父の友人曰く、魔術師に向いていると、言うことだった。


自分ではよくわからないうちに、第一関門はクリアと言うことで、いいのかな。勿論、今後の努力は必須だろうけど。


属性としては、あとは闇と光と風があるらしく、それは今後、他の方に見せてもらえればいいな、と思う。


母は火の属性らしく、マシューは母似。


父は、土と水の属性を。

親子で、親が属性を持たないものは、子は持てないのか?

努力すれば持てるようになるのか?


答えは後者らしい。

ただ習得するまでに、少し時間がかかるようだ。逆に親が持っている属性は、早めに習得できるので、こちらをとる人が多いと言う。



ずっと魔力のことばかりやっていたら、すぐにできるようになる、と期待の膨らむ話が聞けた。


先程見られなかった、闇と光は父のご友人が見せてくれた。


私は字面から、闇属性は怖いと思ってたけれど、闇属性の魔法の色は、薄い紫色で、柔らかな感じがした。光属性は乳白色の淡い光。光と闇は対のように言われがちだが、性質が似ているようだ。




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