第16話

「梓〜ナギちゃん〜」


 19時頃、4人の家の間をとった公園に集合することになり、渚と一緒に向かうと既に香織が待っていた。こちらに気づき手を振っている。


「梓、ナギちゃん!!昨日は本当にごめんね!!!」


 香織の元へ駆け寄るとすぐに香織が頭を下げてくる。


「そんな気にしなくていいよ。それより体調は大丈夫?」

「うん、もうすっかり。お騒がせしました」


 そう言った後、香織が耳打ちしてくる。


「昨日のお詫びに後で遼ちゃんと2人きりにしてあげるからね」

「な、そんなのいいって!!」


 突然の提案に驚く。急に2人きりにされても昨日のように勇気が出るとは限らないので困る。でも香織は絶対に実行してくるはずだ。

 花火が禁止されていない公園ということで、私達以外にもちらほら人がいるのにどうする気なのかはわからないが。


「おーい」


 そんなやりとりをしていると遼が来た。手に花火が入った袋を抱えている。花火を買いに行く役をかって出てくれたのだ。


「遼、お疲れ。買いに行ってくれてありがとうな」

「いいってことよ、通り道にあるし」


 1人1000円ずつ出せば、色々買えるだろうということにしたので先に3人で集めていたお金を渚が遼に渡す。遼からお釣りを均等に配られた。


「みんな揃ったし早速花火しよう〜」


 香織がとても嬉しそうに花火を開けている。それぞれ手に持ち、点火する。色とりどりの花火がとても綺麗だ。


「ナギちゃん、火ちょうだい〜」

「ん、いいよ〜」


 渚の花火から自分の花火に火をつけるため、香織が渚の隣に行く。香織は無意識の行動だと思うが、2人の距離が近くて羨ましくなる。


「梓、ほら」


 遼が花火2本に火をつけ、そのうち1本を私に渡してくる。それを受け取り


「ありがとう!楽しいね!!」


 と返した。本当に楽しい。4人で集まったのは、ゲームセンターに遊びに行った以来だ。約1ヶ月ぶりだったが、とても昔のことのように感じる。それだけ4人でいることが当たり前になっていたのだ。


 思いっきり花火を楽しんで花火も残り少なくなってきた頃、香織が突然


「ちょっとコンビニまでジュース買いに行ってくる!ナギちゃん行こう」


 とスッと渚の手を引き、連れて行ってしまった。戸惑っていると香織が私に向かってウインクをしてきた。さすが香織、やると決めたことは実行するのだ。


「何だアイツ、昨日の今日で元気だな」


 遼があっという間に公園の出口まで向かう2人を見送るしかできなかった。

 ここからコンビニまでそこまで離れていないが、香織のことだ、気を遣ってゆっくり帰ってくるだろう。


「梓、久しぶりにアレ、やるか?」


 ニヤッと笑う遼。


「やる!!」


 アレとは線香花火をどちらが長持ちさせられるかというシンプルな遊びだ。私達が花火をする時の定番である。

 2人で線香花火を1本ずつ持ち、並んでしゃがみ、同時に火をつける。

 真剣勝負、相手を動揺させるのも手段の一つだ。


「遼」

「んー?」

「好きだよ」


 私は、サラッと言った。動揺した遼の手が微かに揺れ、線香花火の火の玉が落ちる。


「私の勝ち〜」


 ニヤッと笑ってみせた。私の手元にはまだ線香花火がパチパチと音を立てていた。

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