第12話
香織と出かけた日に頑張って遼と向き合う!と決めたものの、結局どうすればいいかと悩んで、何も行動できずにいた。気づけば数日が経過し、花火大会の前日になってしまっていた。
-今日こそ連絡する!!
意を決してスマホを握るとちょうどメッセージの受信音がした。メッセージの送信者は遼。私の行動を見ていたかのようなタイミングで驚いた。ドキドキしながら開く。
『明日、鳥居前、18時半』
たったそれだけだった。遼はいつも必要最低限のことしか連絡してこないので、いつも通りの内容だ。しかしこれだけで、明日の花火大会を一緒に行ってくれるということは伝わった。私はスマホを握りしめ、ひとしきりにやけた後、『了解』と返事をした。もう遼は一緒に行ってくれないかもと思いながらも用意しておいた浴衣を見て、明日への期待が膨らんだ。
―明日、ちゃんと話をしよう。自分の気持ちも…伝えるんだ。
今日は念入りにスキンケアをし、パックもして寝よう。明日は浴衣を着て髪型もばっちり決めて、遼に全部伝える、そう決意をして、明日を待つことにした。
翌日。
目が覚めた瞬間から、落ち着かなかった。待ち合わせは夕方だからそれまで課題でもしようと思っても全く集中できず、何度も時計を見て過ごした。今日は時間が過ぎるのがとても遅いような気がする。
出かけようかとも思ったが、それも落ち着かないから結局家で過ごした。半身浴をしたり、髪をどうセットするか雑誌とにらめっこしたりした。
「お母さん、着付け手伝って」
夕方、仕事から帰ってきた母に浴衣の着付けを手伝ってもらうことにした。母は快く引き受けてくれる。
「誰と行くの?香織ちゃん?」
「ううん。遼」
母の問いに答える。なんとなく気恥ずかしい。
「2人で行くの?」
「うん…」
「なら、うーんとおめかしして行かないとね!」
母はとても嬉しそうだった。昔から家族ぐるみで仲が良いから、私の気持ちにも気づいているのかもしれない。
「あんまり遅くならないようにね」
浴衣もバッチリ着付けてもらい、更に髪型も母が丁寧にセットしてくれた。軽くメイクをして、家を出る。
待ち合わせ場所まで歩いていると、周りにたくさん浴衣を着ている子がいる。そわそわしながらスマホを眺めたり、手を繋いで歩いているカップルもたくさんいて、みんなとても楽しそうだ。
神社の鳥居前に着いた。スマホで時刻を確認すると18時15分、約束の15分前だった。遼はまだ来ていないようだったので、鏡で髪型などをチェックする。これから遼に会うと思うと、嬉しさと緊張が入り混じり、落ち着かなかった。
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