第6話
「期末テスト終わったら、夏休みじゃん?バスケ部も休みあるよね?」
「そうだねぇ。また4人で計画立てないとねぇ」
部室で、コンテストに出す写真を選んでいる時に香織が言った。夏休みもバスケ部は練習があるだろうが、休みも何日かあるはずだ。
「それなんだけど…私さ、ナギちゃんを花火大会に誘ってみようかと思って…」
「え?渚?」
思わず聞き返してしまった。香織はコクコクと頷く。
「香織、渚のこと好きだったの?」
「いや、好きとまではいかないんだけど!!ちょっと気になるっていうか…」
焦って手をブンブンと振り、否定する香織だったが、顔が赤い。これで気になってるだけとは言えないのではないか。
ーでも香織が渚を好きなら、遼はー…?
喉が熱い。机に置いてある麦茶を飲み干そうと口をつけた時、
「だからさ、梓も遼ちゃん誘ったら?好きなんでしょう?」
そう言った香織の言葉に驚き、むせてしまう。
「もー、汚いなー」
「な、なん、なんで知っ…え…?」
動揺する私に、香織はため息混じりに言った。
「見てればわかるって。何年見てきたと思ってんの。いつになったら言ってくれるのかなーって待ってたのに、梓ちっとも言ってくれないし」
不満そうに漏らす香織に、動揺が隠しきれない私は、咳払いを1回した。心臓がバクバクと音を立てて、香織にも聞こえてしまいそうだ。
「梓も行動したら?このままずーっと幼馴染でいいの?」
香織が真剣な目をして問う。
「でも…遼は私のことそんな風に見てないよ…」
「だから行動するんだよ!!!そうしないといつまでもこのままで急に現れた女に遼ちゃん持っていかれちゃうよ!?」
ー遼の思い人は香織なんだけどなぁ…。
そう思いながらも、そんなこと言えるはずもなく。
「私、頑張るからさ。梓も一緒に頑張ってみない?」
「関係が崩れるの…怖くないの?」
私の問いに香織は俯きながら答える。
「そりゃ、怖いよ。ふられたら一緒に遊んだりできなくなるかもしれないし。それでも、何も行動せずに後悔するのは嫌」
「すごいなぁ。香織は…」
心からそう思う。私は長年、遼にとって1番近い女の子という場所に甘えてきている。1歩進みたいという思いを持ちながら、この居心地のいい場所を壊したくなくて何も行動しないまま。
「わかった!!私も遼を誘ってみる!!」
「よし!頑張ろうーーー!!」
遼の気持ちは香織に向いているのかもしれない。それでも、ずっと変わることがなかったこの思いは、伝えなければ消化できないのだ。
「でも、とりあえず試験勉強だね…。補習になったら花火大会どころじゃないし」
「それもそうだね…」
熱い思いを勉強にぶつけようと2人で誓いあった。
高校1年の夏、何かが変わるかもしれないー…。
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