第5話

「梓〜遼ちゃん〜ナギちゃん〜」

「香織!早いね」


 授業が終わるとすぐ香織が教室に飛び込んできた。隣のクラスのため、すぐに来れるとはいっても中々の早さだ。


「4人で集まれるの久しぶりだから張り切っちゃった!いつもの所でしょ?早く行こう!」


 その場で駆け足しながら香織が言う。帰り支度を終えた渚がこちらへ来た。


「カオ、そんなに焦らなくてもゲーセンは逃げないから」


 そう言って香織をなだめる渚に遼が鞄を背負いながら


「うっし、行こうぜー」


 と言いいち早く教室を出る。ゲームセンターへの道を4人話しながら歩く。

 ゲームセンターに着くとすぐに4人でエアホッケーへ向かった。いつも分かれるペアは私と渚、遼と香織だった。初めてやった時にグーパーで分かれたペアがなんとなく定着していた。勝負はいつも五分五分だが前回は負け越しているのでリベンジだ。


「渚、今日は勝とう」

「おう!」


 と燃える私達に遼は「負けねーよ!」と言った。

 負けた方が勝った方にジュースを奢るというルールでやっているため、4人共燃えている。たかが120円、されど120円だ。


 しばらくの攻防の末、今回は私達の勝利で終わった。


「やったー!!」


 渚とハイタッチを交わしていると遼が


「あっちい!!ちょっと休憩!!」


 と言った。エアコンが効いているといっても真夏に真剣勝負を繰り広げていると汗もかく。私はタオルを渡そうと鞄に駆け寄った。


「おー、香織サンキュ」


 ペアで近くにいる香織の方が一足早く遼にタオルを差し出していた。遼もそれを嬉しそうに受け取っていた。取り出したタオルが行き場をなくして握りしめていると、


「アズ、それ貸して。今日タオル忘れたから」


 渚がそう言ってタオルを受け取る。

 渚は気が利くタイプなのでタオルを忘れたというのは恐らく嘘だと思うが、こういった気遣いが嬉しかった。

 エアホッケーを後にし、休憩コーナーへ移動した。


「ほれ、梓、渚。ジュースどれにするんだよ」


 お金を入れた遼の元へ寄っていきオレンジジュースのボタンを押す。


「ゴチになりまーす!ありがと!」


 ジュースを持ちベンチに腰掛けると次は渚の分を遼が買っていた。財布を持って横に立っている香織が戸惑っている。私の分を遼が払っているため、渚の分は香織が払うと思っているのだろう。


「香織、今日は俺が払うからいいよ。ほら、お前も好きなの選びな」

「でも…」

「いいから」


 そんなやりとりをしている2人を見て胸がチクリと痛んだ。


 ―なんかいい感じじゃない…。


 ここ最近、2人の仲は急接近している…ような気がする。遼の長い片思いももうすぐ報われるのかもしれない。そうすれば私は遼を諦めることができるだろうか。


 そんなことを思いながら、その後も4人でたっぷり遊んだ。


 朝起きて、学校へ行き、授業を受けてたまに部活に出たり、友達と遊んだり、こうして4人で遊んだり。私の高校生活は毎日こうだった。変わりばえしないが、失いたくないかけがえのない日常だった。

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