第4話

 高校に入学してから、あっという間に数ヶ月が経った。季節は夏。窓際の席だとカーテンを閉めていても日差しが暑いぐらいだ。


「梓〜。今日部活休みだからどこか寄らね?渚には昨日声かけたからさ」


 1限目が終わると同時に、遼が振り返って言ってきた。この前の席替えで遼の後ろの席になった。


「いいよ〜。じゃあ私も香織誘っておくね」


 渚と遼は一緒にバスケ部に入った。私と香織は写真部。自由に活動していて時間に融通がきく写真部とは違い、バスケ部は朝練もあるため、たまにしか休みがない。そして休みの時はこうやって声がかかることもある。

 私は早速香織に連絡をとった。すぐに既読がつき、OKのスタンプが送られてくる。


「香織もオッケーだって」


 そういうと遼の顔がパッと明るくなった。香織だけが別のクラスになってしまったため、遼にとっては集まれる機会というのは本当に嬉しいものだろう。

 ー本当に分かりやすいなぁ…。

 私を誘うのは香織を誘う口実でしかない。高校生になったのだから少し前進すればいいのにと思いながらも、関係が終わることを恐れて長年告白することもできずその場に留まっているだけの私には言えたことじゃないが。


「アズとカオも今日行けるの?」


 渚が少し離れた席からこちらにやってくる。入学してからしばらくはよそよそしかった渚だが、あだ名で呼んでくれる程度には親しくなった。


「なんか久しぶりだね、4人でどこか行くの」

「だなー。もうすぐ夏休みだっつっても俺ら部活ばっかりだしな」


 内輪で顔を扇ぎながら遼が言った。


「でもここのバスケ部強いでしょ?県大会とか行くかもしれないって」

「俺達はまだ出られないけどね。いつか試合出るときは見に来てね」


 何故か私の頭をポンポンとする渚。立っている渚の位置からすると私の頭が撫でやすい位置にあるらしく、よく頭を撫でられる。こういうことをすると他の女子なら勘違いしてしまうだろう。

 渚は高校に入ってからぐっと背が伸びた。並んで歩いても少し見上げなければならない。170cmある遼と並んでも身長差はあまり気にならなくなった。


「まぁ、いつものゲーセン行こうぜ」

『賛成〜』


 遼の言葉に渚と声を揃えて返事をした。渚とは何かと息が合う。遼に負けないぐらい良いコンビだと思う。

 放課後の楽しみがあるから、その日の授業はあっという間に終わった気がした。

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