第2話
翌朝。
「あまり眠れなかったな…」
真新しい制服に手を通しながら、ため息をつく。昨夜、彼を怒らせてしまったことが気になり、眠れなかった。
今日、会うことがあればちゃんと謝ろう…!
そう決意をし、朝食を取り支度を済ませた。
「行ってきまーす」
母の行ってらっしゃいという言葉を聞きながらドアを開けると
「-あ…」
目の前に、彼がいた。同じマンションから、同じ学校に、同じ集合時間に間に合うように向かうのだから出る時間が同じでも何ら不思議はないのだが、その考えは梓にはなかった。思ってもいないことに固まっていると、彼は小声でおはようと呟き、階段の方へと向かっていった。
「あ。おはよう…」
そう返したが渚は既に階段にさしかかっている。謝罪しなければという気持ちで慌てて追いかけたが歩くスピードが早く梓がエントランスを出る頃には彼はマンションの前にある信号を渡ろうとしていた。
「ま、待って…」
点滅する信号を渡りきり、彼の元まで走る。
「と、遠野君…!」
名前を呼ぶと振り返った彼が驚きの表情を浮かべている。
「え、どうしたの? 道案内なら大丈夫だよ。俺本当にもう覚えているし…」
「違うの。昨日、失礼なこと言っちゃったから謝りたくて…」
「失礼なこと…? 言われたっけ…?」
きょとんとしている彼は、心当たりがないらしい。怒っているように見えていたが至って普通に話もしてくれている。
「同級生って聞いて驚いてしまって…その後怒っているみたいだったから…悪いこと言ってしまったなぁと思って…ごめんなさい」
本人は気に留めていないようだが謝罪する。すると彼は「あぁ!」と声をあげた。
「あんなこと言われ慣れてるし大丈夫だよ。機嫌が悪かったのは観たいテレビの途中で連れ出されたからなんだ。こっちこそ態度悪くてごめん」
そう言って頭を下げる渚に「こちらこそごめんなさい」と言い頭を下げる。その状況がおかしくて2人で笑った。
「学校まで一緒に行く?」
「あ、私駅前で待ち合わせしていて…」
「じゃあ、駅前まで一緒に行こうか。あ、改めて、遠野渚です。渚でいいよ。これからよろしくね」
「こちらこそ、よろしくね」
そう言って並んで歩き始めた。
ーきみのとなり。
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