きみのとなり。
翠月
第1話
「じゃあ、明日駅前に7時半ね!」
明日から始まる高校生活に希望を膨らませ、通話を終える。高校生になるからと新調してもらったスマートフォンはまだ手になじまない。壁にかけた新品の制服。新しい通学鞄。
何もかもが輝いて見える。
「今日は眠れるかな…」
ぽつりと呟いたとき玄関から母の呼ぶ声がした。
「どうかしたー?」
玄関に向かいながら母に尋ねると、母は誰かと会話をしているようで、いつもより1オクターブ高いよそいき用の声が聞こえてくる。
「あ、
「こんばんは、遠野です。こっちは息子の
母より少し若い雰囲気の女性とその隣に立つ男の子。
身長は160cm私より少し低いぐらい。まだ小さくて可愛らしい雰囲気をまとった男の子。【息子】という言葉がなければ女の子と見間違えるような中性的な顔つきのその子は、私より年下だろうか。
「こんばんは…
頭を下げると母が言った。
「渚君、明日から梓と同じ高校に通うらしいのよ」
「えぇ!?年下じゃ…」
母の声にかぶさるように驚きの声をあげてしまったと同時に、やばい!と自分の口を慌ててふさぎ、彼を見る。彼は少し不機嫌そうな顔をしてこちらを見ていた。
当たり前だ。私の発言は明らかに失礼なものだった。
「そうだ、梓。明日の朝、渚くんと学校に行けば?駅までの道案内がてら」
謝罪すべきかと考えていると、そんな発言気にしていないかのように母が言った。
「え…」
「いえ、結構です。駅までの道はもう大体覚えていますし、そこまでしていただかなくても」
やはり怒っているのか…。
そう思いながらも謝るタイミングを逃してしまった。彼はそのまま、じゃあ…と一言告げ帰っていった。
ーこれが、私と彼の出会いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます