2、お昼休みなんて大嫌い
自分のプロフィールの、あまりの中身の無さにゾッとする。
ちなみ短所はすぐ出てくる。コミュ障。
嫌いなものは、休み時間。
とりあえず机に座っておけば、一日が過ぎる高校生活に当たって、休み時間は異物だ。
特に昼休み。
誰とお昼ご飯を食べるか、当人の交友関係が試されている。俺のような陰キャぼっちにとっては、地獄の時間だ。
一人で教室で食べようものなら、嫌でも他人の目が気になるし、もちろん一緒に食べる友人もいない。最悪だ。
唯一の隠れ家が、東校舎一階の男子トイレ。
校内で一番古いそのトイレは、染み付いた異臭のせいで誰も近づかない。下水と
その匂いの中、俺は毎日、弁当を食べている。
他のトイレで、人の気配にビクビクしながら、飯を食べるよりは、まぁ落ち着ける。
イヤホンで耳を塞ぎ、まぽりん
『ありがとうなのじゃー!』
登録者数三百人。
俺なんかがコメントをしても返してくれる。それが小さな幸せ。これで地獄の時間は乗り切れるはず……だったのだが。
【水漏れのため、このトイレの使用をしばらく中止します】
急転直下。
隠れ家は閉じられた。
しばらく、とはいつまでのことだろうか。一日? 一週間? 一ヶ月?
どちらにせよ死活問題だった。
「はぁ……」
張り紙の前でため息をつく。
今から教室に戻るのはあり得ない。新しい安息地を見つけなきゃいけない。
トボトボと階段を上がっていく。
まさかここまで友達ができないとは、思っていなかった。コミュ障に対して、世界はあまりにも無情だ。
何をするにも一人。
楽しそうなクラスメイトを横目に見ながら帰宅する。俺の青春の日々は、ドブみたいな灰色だ。
せめて落ち着いて、お昼ご飯を食べる場所が欲しい。
どこか良い場所はないものかと、校舎内を放浪していると、屋上に繋がる薄暗い階段にたどり着いた。
……ここなら人目を避けることができるかもしれない。
誰かがいる様子はなく、踊り場には掃除用のモップや、逆さまになったバケツが雑然と置かれている。
そこを過ぎると扉があった。
誰もいない代わりに、半開きになった扉の隙間からは、青空が見えていた。
「……開いてる」
先生か、あるいは生徒がいるのか。
確かめてみようと、恐る恐る扉をのぞく。
「ん?」
キィという音に、屋上にいた人影がこちらを振り返った。
そこで出会ったのが、さっき言った、焼きそばパンを吹き出した彼女。
隠れて、屋上に入り込んでいたもう一人のぼっち。二葉先輩だった。
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