陰キャぼっちですが、俺の彼女は可愛すぎる。

スタジオ.T

1、一緒に食べよう


 初めて出会った時、二葉ふたば先輩は焼きそばパンを食べていた。


 誰もいない屋上の隅っこで、口いっぱいにパンを頬張りながら、


「ん、ぶほうっ」


 入ってきた俺に気がつくと、彼女は盛大に吹き出した。


「げほっ。げほっ」


 咳き込み、自分の胸をどんどんと叩きながら、彼女は水の入ったペットボトルを手に取った。


 めちゃくちゃ動揺している。

 ……まずいものを見てしまった。


 扉をソッと閉める。 


「待って。待って。行かないで」


 顔を真っ赤にしながら、彼女は叫んだ。勢い良く水を飲むと、「あー」と大きなため息をついた。


「どうやって入ったの? 鍵閉めてたはずなのに」


「普通に空いてましたけど」


「ウソ」


 彼女は目を丸くした。


 その言葉に嘘はなかった。

 確かに普段、屋上は立ち入り禁止だ。だが、今日に限っては、半開きになっていた。


 そう話すと、彼女は顔に手を当てた。


「うかつだった」


 ペットボトルのキャップを閉めると、ぼやいた。

 どうやら、ここは彼女の場所のようだ。先住民がいるなら、俺が入る余地はない。


「じゃあ、俺はこれで」


「うん?」


「お昼、邪魔してすいませんでした」


 再び扉を閉めようと、ドアノブに手をかける。


「待って」


 出て行こうとした俺を、彼女は再び呼び止めた。

 さっきみたいな慌てた様子ではなく、どこか切実に彼女は声をかけてきた。


「君もぼっちでしょ」


 俺が手に持つ弁当袋を見ながら、


「……一緒に食べよう」


 やや恥ずかしげに視線をふせて、彼女は言った。


 それが俺と先輩の出会いで、高校生活で初めて誰かと一緒に、お昼ご飯を食べた日だった。

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