家族の中で、彼との結婚に最初に賛成してくれたのは母だった。

結婚について恐る恐る相談した私に、母はいとも簡単に許可を出してくれた。

「あなたが家に男性を連れて来るなんて初めての事だったし、あなたの態度を見た時に、何となくそんな予感はしたのよ。女は好きな人と結ばれるのが一番の幸せ。あなたが決心したなら、そうしなさい。」

母と彼は面識（めんしき）があったが、まさか母がそんな事を考えていたとは全く知らなかったので、私は本当に驚（おどろ）いた。

対照的に、一番の難敵（なんてき）は父だった。

父は私を目の中に入れても痛くないくらい可愛がってくれたが、それだけに娘を手放したくない気持ちが強いようだ。

父への報告は、予想以上に大荒れな展開となった。

「結婚は認めんぞ！」

「蘭堂（らんどう）家の一人娘が結婚しないなど許されないと、お父様は常々（つねづね）おっしゃっていたではありませんか。お父様のお望み通りになって、一体何がご不満ですの？」

「お前はまだ十七ではないか、結婚など早すぎる。」

私が反論する前に、母がすかさず助け舟を出す。

「あら私だって、あなたと結婚したのは二十歳（はたち）の時でしたよ。」

「喜久枝（きくえ）、お前は一体どちらの味方なんだ！・・・まあいい。友梨佳（ゆりか）、焦（あせ）って結婚しなくても、まずは大学に進んでもっと見識（けんしき）を広めていけば、お前にふさわしい相手が出てくるというものだ。」

「私（わたくし）もう決めてしまいましたの。いくらお父様のお言いつけでも、聞く訳には参りません。友梨佳（ゆりか）は御門（みかど）さんと結婚いたします。」

「喜久枝（きくえ）、お前も少しは反論しろ！」

「嫌（いや）ですよ。だって私、このご縁（えん）に賛成ですもの。」

「あぁもう！・・・いいか友梨佳（ゆりか）、お前はその男に騙（だま）されているんだ！」

「非道（ひど）い・・・御門（みかど）さんに会ってもいないお父様に何が分かるって言うの！？お父様の馬鹿！大嫌い！」

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