第26話 A confession of my secret

彼との正式な交際がスタートした私にとって、次なる問題は両親への報告だった。


両親への報告なしで秘密に付き合う事も不可能ではなかったが、その場合、行動にかなりの制約せいやくがかかる事が予想された。


そもそも別に悪い事をしているわけではないのだから、かくす必要は無いだろう。


それにオープンな付き合いをした方が、何かと都合が良い事も事実だ。


ただ問題は父だった。


父の反応については、正直予想が付かなかった。


考えた末に私が出した結論は、まず母に報告し、父に報告するかどうかは、母と相談して決めるというものだった。


父は今日、夜遅くまで家に帰ってこない。


母に報告するには絶好のチャンスだった。


「お母様、大切な話があります。」


「改まって、どうしたの?」


「結論から申し上げます。私、男性とお付き合いする事になりました。」


母は少し驚いた顔を見せたが、すぐにいつものおだやかな表情に戻る。


「そう・・・あなたもそんな歳なのね。」


感慨深かんがいぶかげにつぶやいた母は、気持ちを切り替えるように私に質問する。


「それで、お相手はどんな方なの?」


「お母様も知っている人よ。表参道おもてさんどうで足をくじいた時に助けてくれた御門みかどさんなの。それでね・・・」


私は彼のプロフィールや人となりを母に説明する。


幸いにも母の反応は好意的こういてきなものだった。


「そんな偶然があるなんてねぇ・・・そう言えば、あの時のお礼もまだだから是非ぜひお会いしたいわ。今度家へ連れていらっしゃい。」


「分かりました、御門みかどさんに聞いてみます。ところでお母様、この事をお父様に話すべきかしら?」


母はしばらく考えてから意見を述べる。


「そうねえ・・・、あなたの口から話すのは、ちょっとショックが強いかもしれないわね。タイミングを見て私から話すから、あなたは心配しなくていいわ。」


「助かります、お母様。」


母の承認しょうにんを得た事で、私たちの交際は一歩前進した。

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