第9話 再び、森へ
『森で~おっさんぽ~さんぽ~皆でさんぽぉ♪ふーん、ふふーん』
『はぁ~、どうしてこうなったんだ~。』
『あら、まあいいじゃあありませんか。偶には昔みたいにのんびり依頼をこなすのも必要よ。』
「うん、いい天気だ。」
歌を歌って気分のいいリーズと、アルに戦闘経験を積むために行かせようと思ってた父とノリノリなお母さんというテンションの温度差が凄まじい事になってる。
お父さんの装備がガチだ。お父さんは予備の剣も持ってる。一応身を守れる俺と比べて、リーズは実戦経験だったり戦闘経験がないので、守るためにタンク役に近い装備になってる。普段の装備と違う当たり、かっこいいなぁと思う。
さて、何故こんなことになったのか。30分ほど前にさかのぼる事となる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家の近くまで戻ると、お母さんとリーズの声が聞こえた。
何やら、言い合ってる様子だ。
「何か、言い合ってる?」
『あーもしかして、ダンジョンに行くって依頼聞かれてたか?』
家に入ったら…
『私もぉ行きたいぃ~』ジタバタ
『今は危ないのよ。森は~』
『お父さんがダンジョン探すぅ~って言ってたぁ。アルにぃもお父さんと一緒だったのにぃ、皆で探しにいきたぃよ~』
『それでも、危ないから駄目よ。って、あなた…』
『あーリーズ、すまん。さすがに、アルと一緒に連れて行って守りきれるか、微妙なんだ。』
『ふーんだ、勝手についていくもん。絶対についていくもん。』
『はぁ~しょうがない、分かった。リーズを連れて行くぞ。アル、身につけていて欲しい装備がある。』
『ちょっと、あなた!』
『セーラも行くぞ。今日やる事あんのは知ってるが明日俺も手伝うから…頼む。』
『……はぁ、それならいいわ。』
「お母さん、矢玉が欲しいんだけどどこにある?」
『あら、あそこになかったかしら?』
『あぁ、弓じゃないから矢玉じゃないんだ。』
「クロスボウって言うんだけどこれにしたんだ。」シュン
『ッ―!この武器ね。矢玉じゃなくてボルトね。それだったら少しぐらいしかないかもしれないわ。アルはついてきて、ギルはリーズの準備手伝って上げてね。』
「『あいよ。』」
準備を終え、出発した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というわけだ。防具はなしだけど、如何にも無防備そうに見えるが長袖の上下と革靴だ。シンプルな服装だ。前回、半袖で木とか擦れて切り傷ができたし、その反省を生かした感じだ。あの日は俺が決めたわけではないが。
「また、あの森へ行くのかぁ。」
子ブンの戦闘に勝った事を思い浮かべたが、実際勝てたのは運が良かった部分もある。メニラや父と母に聞いたんだけど、ゴブリン系統は数体見かけたら20居ると思えっていう、つまりゴブリンは数を頼った戦い方をするが武器が粗末なためそこまで脅威というわけではないらしい。
今回の場合、武器も粗末じゃないため脅威なのだ。実際にあの廃村の近くにあいつらがいたわけだし、一回死んでるわけだ。あの狼に助けられてなければ、死んでたかもと不安になる。
『怖いのか?…まあ、実際に見て戦ったわけだが』
「うん。大丈夫だ…子ブンの3匹より多くの数いたら囲まれて死んでたかもと考えただけ。」
『そういった言う風に最悪の可能性を回避する努力を怠らなけりゃ、最悪な結果にならないと信じりゃいい………それでも選択が左右するときもあるがな。』
『大丈夫だよぉ、お母さんもいるもん。』
『それに俺もいるしな。ゴブリンの10匹ぐらいへじゃないぜって言えるようにならないとな。自分の目の前の敵を倒す事だけ考えりゃいいさ。』
『それはあなただけよ。ギル…』
『リーズもお母さんと絶対に離れないと約束できるか?』
『うん…約束守る。…アルにぃだけ先に行ったら、一人ぼっちいやだもん。うぅ~思った以上に暗い…』
『相変わらず、お兄ちゃんっ子なんだな。はっはっは……。』
一番慕われてるのは、お父さんだけどな。
森へ入り、お父さんが先頭にしてついて行ってくと開けた場所に出る。
どうやら訓練場跡地のようだ、決してガラクタ置き場というわけではないが、木の武器や瓶や的になるような場所だ。
「お父さん、ここは?」
『そうだな。誰も管理してねぇ廃れた練習所だ。元々、狩人達や騎士隊のたまり場だったんだが指導者が不在になってつぶしたものの、まっ実の息子の実力を測るに丁度いい場所だ。さっ』
「その前に、これの練習してみたい。」シュン
いや、さすがにいきなり戦闘訓練はヤダ。絶対ボコられるやん、体格差あるし。ちょっとでも後回しにしなければと出したのが…
そう、クロスボウである。
『あーそうか。それならセーラだな。おーいセーラ、先に頼む。』
『はーい。……まずはお手本を見せるわね。』
ギィーバチ ガチャコン
まずは弦…糸を指定の場所上部の出っ張りの部分に収め、ボルトを入れ、装填完了。後は狙って放つだけ、安全装置なさそうだからトリガーには手かけないようにしないとな。
お手本を見たし、意外と簡単だしできそうだ。
カチャ パシュン パッチン バリン
『えっ……』バッ
「…すごい」
『わぁ~お母さん、すごい私にも教えて~』
綺麗に当たったなぁ。距離がある、50?いや子供の距離感だから3、40ぐらいか、そのぐらいの距離の瓶に命中させたお母さんなんだけど、その後のカッコ付けで凄い速度でクロスボウをしまった。
神業だ。でもなんか変な音したような、気のせいか。割れた破片の音かな。
『お母さん、どうしたの?』
『えっ…ううん、何でもないわ。ちょっとね、アル、リーズ後で教えるから、さっきの真似る練習してて、ちょっと気になる事ができたの。』
急にそそくさと森へ行ったお母さんである。
『「何か、怪しい。よし行ってみよう。」』
リーズと考えが被ったのである、そして双子の様に同じ顔をしてたとお父さんは語っていた。何が起きたのかはお父さんは気づいている模様…
『手入れが行き届いてなかったのね。まさか発射と同時に切れるなんて…スコシキツイクライダッタカラ…はぁ』
『「何が切れたの?」』
『…えっ、何でいるの。』
『「怪しかったから~?」』
『あらやだ、この子達賢い。』
「何かおばさんみたい。」
『ア…それいっちゃ…ダメ…』
カチャ
『二人とも、ギルとの戦闘練習よりもっと近しい物の方がいいわよね。』
『アルにぃだ…』
『同罪よ。大丈夫よ、練習だから……覚悟しなさい。』
『「ギャー」』
色々な目にあったぜ。途中から目回ったりわけわからん攻撃された。反撃しようと近づくと逃げるのヤバいぐらい早いし。体力尽きた…
バシュ…ザクと音を出し、やや右下の場所に命中する。初弾で当てられるって俺ってば天才…嘘です。さっきの半分くらいの距離で当てました。この距離でも結構集中力使うね。
「でも木に命中したけど子ブンみたいに小さくて動いてたら、当たらないかも。」
『初めてしては中々いいんじゃないか。無理して一つの武器を使い続ける必要もないから、状況にあった戦い方をするんだ。』
「だけど、これには連発する方法がある!」
『そうか、さぁ解き放てお前の真の力を!』
ノリに乗ってくれるお父さん、そして装填してから声を出せばよかった。思いの外時間がかかる。
カチャカチャカチャ ガコン パシュンパシュンパシュン
スカッ ストン ストン
命中したが本当に威力は低いね。木に刺さって入るから痛いくらい死にはしないけど盾とかに弾かれそうだ。でも撃ち心地はよしクセになりそうだ。
その後、何発か撃ち、木を外す事は少なかった。
リーズ?、お母さんと鬼ごっこで疲れたからかお昼寝してるよ。天使だ。時間もあっという間に経ち、リーズが目覚めた頃には森の奥へ向かう感じの雰囲気だ。
空気読めるの大事…。
ダンジョン探しに行くぞー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます