第49話 LTSG作戦会議
クラスの女子関係がうっすら垣間見えるようで怖い怖い。この時ばかりは
その一方で、ボクのそんな気持ちとは無関係に話は進む。愛ちゃんが
「他狙ってそうなの誰かいたっけ?」
「ええとですね、噂レベルですけど舞浜グループの
「クラス外って誰かなー?」
「
それから五組に一人いるとか」
意外な名前が出てきて、飲みかけたオレンジジュースを危うく吹き出しそうになった。ギリギリのところでなんとか飲み込んで事なきを得たけど。
グラスをゆっくりとテーブルに戻す。
「
「そうなんですか?」
怪訝な顔をする史香ちゃん。
「彼女がうちのクラスに来るのは純粋にボクのことが目的だから」
「私も秦さんは違うと思うね」
愛ちゃんが身を乗り出してきた。
「彼女はボクがちゃんとやれてるか見に来るだけなんだよ。ほら、ボク休んでたでしょ? だから心配してくれてて」
「でもさ優樹、ホントにそれだけ?」
愛ちゃんの視線に疑いの感情が練り込まれてる。一体どういうつもりなんだろう。
「まあ優樹のことが心配だから様子を見に来るって話は分かるよ? でもね、あの目つきがね」
え?
「優樹を見る目つきだけ、妙に重いっていうかさ……ネットリした感じがするんだよね。すこーしだけ、だけどね」
え? え?
「秦さんと優樹って、同じ中学だったんだよね?」
「そ、そうだけ、ど?」
「優樹、秦さんとの関係、何か隠してるんじゃない?」
愛ちゃんの瞳が怖い。
隠すような関係なんて……あ、あるか、生成神と破壊神だし。
その問いに答えることができずに脂汗を流していると、ボクを挟んで反対側から救いの声がした。
「
僕もその救いの声に乗って、
「そ、そうだよ愛ちゃん。ちょっと落ち着いて?」
「そうですよ、それじゃまるで優樹ちゃんと秦さんが百合友みたいじゃないですか」
ゆ、百合って……。愛ちゃん、ボクのことそんな目で見てたの?
それに史香ちゃんもさらっと指摘してるけど、この話の流れはそういう事だって分かってるって事だよね? えー、女子話やっぱり怖いよ。放っとくとどこまでも妄想が広がってく。
「さすがにさー、それは穿ち過ぎでしょー」
佳奈ちゃんの真剣な眼差しが愛ちゃんに刺さる。
それに気づいた愛ちゃんは焦りの色を隠せない。
「え、あ、あれ? 違った?」
「普通に
史香ちゃんもやや呆れ顔で、腕を組んだまま愛ちゃんを横目で捉えてる。
「……これはめぐにも尋問しないとダメだねー」
佳奈ちゃんはそう言うと立ち上がる素振りを見せる。史香ちゃんもメガネを怪しく光らせてにじり寄る……って、間にボクいるんだけど?
「ちょ……ステイステイ、悪かった、悪かったから。
なんでか完全に勘違いしてたよ、ははは……」
旗色が悪いと勘付いた愛ちゃんが必死の防戦に。
ボクは努めて平静を保って、にじる史香ちゃんを避けるようにソファーに深く座り直して、誰に言うともなく呟く。
「……玲亜ちゃんはボクのこと心配して見に来てくれるだけだよ。ホントに……」
「美しい友愛ですねえ」
「そうだねー。そしてそれを
結局二人は止まることなくボクを乗り越えて、愛ちゃんにじわじわと襲いかかる。
「えー、待って。もう反省したから、反省したからあ!」
愛ちゃんの断末魔に耳をふさぎつつ、僕はドリンク片手に二人と席を入れ替わるようにソファーの隅っこへ。
人を呪わば穴二つ。
ボクは改めてジュースで喉を潤す。うん、おいしい。
§
愛ちゃんの成敗が終わって少し落ち着きを取り戻した個室の中。
ボクと宇佐美君をくっつける計画の会議が続いてる。
席順はボク一人対愛ちゃんたち三人になっていた。
「でもね、宇佐美君に近づくと言っても、ボク話しかけられないよ?」
一人未だにまごついていると、愛ちゃんが身を乗り出してきて指をテーブルに突き立てる。
「そんなのはねえ優樹、度胸よ度胸」
「そうだ、勉強で分からないからっーて言って寄っていけば良いんじゃないかなー?」
愛ちゃんの様子に目配せしながら、佳奈ちゃんはソファーにもたれたままでいる。
ナイスアイディアと言いたげな感じで、史香ちゃんが両手を合わせて佳奈ちゃんの意見に頷く。
「それ良いですね。
優樹ちゃんが分からないとなれば、宇佐美君かクラス二位だった
「そこで佐藤君の方に行く意味は?」
愛ちゃんが並ぶ二人に目を配る。
居並ぶ二人、同時にかぶりを振った。
さらに佳奈ちゃんは相変わらず余裕のある態度で言葉を返してくる。
「それはないよねー」
「それに佐藤君とはまだこれといった繋がりもないですよね?」
史香ちゃんの目がメガネの奥からボクに問いただす。
「うん、佐藤君とは話したこと、ないね」
「じゃあ方針は決まりだね。あとはタイミング」
そう言って膝を崩してソファーにもたれかかる愛ちゃん。
「舞浜の目に付くとまた面倒だしー、タイミングは重要だねー。
それはそうと彼さ、部活はどうしてたっけー?」
「テニス部だねえ。だいたい毎日ぐらい参加してたんじゃないかな?
てかいっそのこと優樹もテニス部に入っちゃえば?」
またもやの急転回。本当に話の膨らみ方が半端ない。
「ええ?」
ソファーに身を沈めたままの愛ちゃんが両手を頭の上で組んでこちらを見てる。
「優樹は中学校の時、部活はどうしてたのよ?」
「え、あ、えっとね……テニス部だよ」
少し目線を下に外して答えた。
「おおー、じゃちょうど良いじゃん」
「高校のテニス部ってついて行ける自信ないよ」
膝の上に乗せた肘に上体を更に預けて俯く。
「体育祭であれだけ走ったお人がなに言ってるのー」
俯いたまま、目線だけ上目遣いで愛ちゃんに向ける。
「や、あれもう必死だっただけ、だから」
「まあテニス部に入るかどうかは後々の話としてさ。
それよりもスマホ、スマホは必須だわ」
「そうですね。連絡先の交換もできなくては話が進みませんよ」
「それじゃーこうだね。
スマホを手に入れることとー、勉強を教えてもらうに
「そうそう。そういうこと」
なんだか勝手に話が進んで行ってしまう。
ボクは宇佐美君と仲良くなれれば良いだけなんだけど、男と女に分かれただけで、こんなにややこしい話になるなんて思ってもみなかった。
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