第48話 はじめての恋バナ大会
やっとマイクから解放されたと思ったら、今度はトークタイムに。
三人の中では普段一番絡みの少ない
「それでさー、
遠慮も何もないストレートすぎる問いかけに、ボクは否定するだけで精一杯。でも当然そんな程度で追求が止むはずもなくて。
「え、そ、そんなことない、よ?」
「そういう言い方するときが一番怪しいんだよねえ優樹は」
え、ええー?
愛ちゃんが続ける。
「自信のないときとか何か隠してたりするときの言い方に特徴あるんだよ、知ってた?」
え、何だろう。それボクもすごく気になるんだけど。
「え、なにそれー。詳しく教えてよめぐちゃーん」
「ふふーん。優樹は自信がなくなると語尾が途切れるんだよ」
「ええ? ボク、まったく自覚ないんだ、けど……ほんと?」
「ホントもなにも、今まさにそれじゃん? 自分で気づいてなかった?」
「確かに言われたらそうだわー、今見事に途切れてたねー」
「ですね。私もまったく気がついてませんでしたよ。愛さん鋭い観察眼ですね」
なんてことだろう。それじゃボクがどういう心持ちでいるかとか愛ちゃんには筒抜けだったって事?
そういえばあんな時もこんな時も、愛ちゃんには的確に助けてもらってばっかりだったと思い出して、妙に恥ずかしくなってきた。
「で、どうなのよ優樹?」
そして話は元に戻ってきて、愛ちゃんに詰め寄られるように答えを急かされる。
もうこうなるとまな板の上の鯉みたいなもので、ボクに逃げ場はない訳で。腹をくくって正直なところを答えることにした。
「ど、どうって……それは、気になる、よ?」
「出ました! 告白来ました!」
愛ちゃんが大きな声を出して場を席巻していく。
そしてそれに乗って佳奈ちゃんが畳み掛けてくる。
「えーなに、優樹ちゃん宇佐美くんが良いのー? 確かに頭いいしそこそこ顔もいいしー、性格も良さそうじゃなーい?」
さすがに小中と一緒でした憧れでした追いかけていました、なんて言うわけにいかないし、ボクはどう答えたものか考えあぐねて俯いてしまった。
いや、ボクとしては彼と男女の付き合いをしたいわけじゃないし、だから何か無難な言い方はないものか探しているのだけど。焦りまくって心には冷や汗がダラダラ湧いてる感じがする。
「早くお話しした方がすっきりしますよ?」
「……そうだね、気遣いのあるところ、かなあ」
ボクは顔を上げてはっきりと答えた。
すると愛ちゃんがさっきまでとは打って変わって落ち着いた声で首肯する。
「あー、なんとなく言いたいことはわかる」
「そうだねえー。やっぱりあれ? こないだの体育祭の時のー?」
佳奈ちゃんからもがっついた感じがなくなって、真剣な目でボクを見る。
その目力に誘導されるように、ボクも首を縦に振る。
「う、うん」
「宇佐美君さあ、優樹のこと上手いことリードしてたよねえ」
愛ちゃんの鋭い観察眼から繰り出された更なるひとことが、話の流れを少しばかり軌道修正。それに史香ちゃんも頷いて、どんどんと繋がっていく女の子トーク。
さっきまで話の中心にいたはずのボクは、そこではすっかり脇に置かれて話が進む。
「あれは慣れてますよね」
「うんうん、あれはだいぶ慣れてるねー。もう誰かとつき合ってるんじゃないのー?」
「そういう話は聞いたことないですよね」
「じゃあフリーなん?」
「狙ってる女子は多いみたいですよ」
「
「あれはあからさま過ぎて引くレベルー」
「舞浜は頭確かにいいけど性格がちょっとね」
「頭だって優樹ちゃんの方が上じゃないですか」
「それはそうかもねー。
優樹ちゃん、休んでたはずなのに女子じゃクラス2位な訳だしー」
「どうするよ優樹、ライバル多いってよ」
そしていきなりボクに戻される言葉のドッジボール。キャッチするのも大変だ。
「え、や、ボクは、うん……」
案の定、たいした返答もできない。
女の子トークに交ざるのは、まだまだボクにはハードルが高いみたいだ。
そしてすぐさまのツッコミ。
「そんな弱気じゃダメだよ優樹ちゃーん」
「そうですよ、ライバル多いんですからもっとしっかりしないと」
え? ええ? みんな、何か怖いよ?
三人に囲まれて、それぞれの視線がボクに収束する。あまりに真剣なその目力に、この問題を一番軽く考えてるのはボクなんだと気づかされた。
「あたしらじゃ宇佐美君だなんて畏れ多いけど、優樹は性格悪くないし頭もいいし運動できるし誰が見てもきれいだからさ、彼としっかり釣り合うと思うから頑張りなよ」
「そーそー。私たち友達だしさー、協力するよー?」
愛ちゃんと佳奈ちゃんがそう言って励ましてくれる。史香ちゃんは無言のまま何度も首肯していて、三人とも同じ意見みたいだ。
「まあ本音を言えばさ、舞浜にだけは絶対取られて欲しくない」
「そーそー」
「ですね」
ここでも三人の意見が一致したけど、その声色は一様に重い。舞浜さんどれだけヘイト向けられてるのだろう。クラスの女子関係がうっすら垣間見えるようで怖い怖い。この時ばかりは愛ちゃんたちが友達で良かったと感じた。
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