第25話 破壊神ちゃん試着する


 カットソーの上からでも双丘の上にある二つの飛び出しがなんとなく目立ってる。

 気づいてしまうと恥ずかしさがこみ上げるもので、ボクはカーテンの隙間から顔だけ出して、小さな声で店員さんを呼んだ。


 店員さんはジャッとカーテンを開けてしまってボクは顔から血の気が引いてしまったけれど、それも一瞬のこと。光の速さのような手際の良さで店員さんはボクのサイズを測っていく。



「はい、ちょっと腕を上げて……そうそう。今度は下げてもらって。はいちょっとキャミソールを上に上げますねー……」


 バスト周りだけ測るのかと思ったら、ウエストもヒップもちゃっちゃと測られていった。


「アンダーが67で、トップが84ってところでしょうかー。サイズは65のDぐらいがちょうどだと思いますよ。

 お気に入りのを見つけてもらってフィッティングしてみましょうか?」



 店員さんが慣れた口調でそんな事を言ってきた。ボクでは判断が付かなかったのでママを呼んでもらう。


「どうしたの?」


「サイズは測ったんだけど、気に入ったのを探して試着? してみますかって」


「せっかくだからやってもらったら良いんじゃない? むしろそのために来たんだし。

 それで、ゆうきちゃんが自分で選ぶ? ママが選んであげてもいいけど……」


 ママが選ぶとまたさっき見せられたようなピンクのヒラヒラ満載になってしまいそうな予感がしたので、ボクは自分で選ぶことにした。

 キャミソールの肩紐を元に戻してフィッティングルームをあとにする。



 とはいうものの種類が多すぎて目移りというか目が回ってるのだけど。



 ボクはなるべくシンプルなのを探しに店内をうろうろ。すると店員さんがまた近づいてきて色々と教えてくれる。曰く、バストを形良く維持しようと思ったら、下からのサポート力が十分ある物を選ばないといけないらしい。でもそれだと窮屈だったりもするから、普段は楽なノンワイヤーを使うと良いですよとか助言をくれた。


 サポートの強いのはこんな感じ、ノンワイヤーならこういうの、それから夜お休みの時はこういうので、とかとか。店員さんが色々と持ってきてくれて説明してくれる。ボクはその中から三つ選んで試着してみることを伝えた。



「少し面倒かもですけど、キャミソール、もう脱いじゃいましょうか」


 店員さんがにこやかにそう言ってくる。

 三つも試着するのだから確かにキャミソールはない方が楽だし、フィットもその方がよく分かりそうだ。ボクは分かりましたと答えて、最初のブラジャーを受けとった。



 服を着替えるのもだんだん慣れてきて、ささっとキャミソールを脱いでブラジャーを身に着ける……のだけど、後ろホックがどうしても上手くいかなくて、ボクは情けない声で店員さんにヘルプを出す事になってしまった。



「すみませぇ~ん」


「ああ、ホックですね。だいじょうぶですよ。はいできた」



 あれほど手こずったホックはあっさり留まって、ちょっと胸が締め付けられる感じ。


「きつくないですか?」


「少し締め付けてる、かな」


「それじゃ一段広げましょうか」


 店員さんはそう言うと背中のホックを留め直す。スッと楽になって、これなら大丈夫そうだ。



「あ、楽になりました」


「良かったです。それじゃこちらに向いてもらって、少し前屈みにして、ちょっと失礼しますね」


 そう言うと店員さんの手がブラジャーのカップの中に伸びてきて、脇の下の肉を胸の方にかき寄せる。突然の行動にボクが硬直してるとそれも終わったみたいで、続けて肩紐の調節が始まった。


「いきなりで驚かせてしまいましたね。

 ご存じかも知れませんけど、ああやって脇の下に流れてる肉もかき寄せてブラジャーの中に収めるんですよ。でもまだ若いからほとんど流れてませんね。

 それから肩紐の調整ですね。

 あんまり引っ張り上げてもいけないし、もちろんルーズでは意味がないですし……はいこれでどうでしょう? 軽く引っ張り上げてる感じで、肩紐に指が一本通るぐらいと覚えて下さいね」


 身体を起こして鏡にまっすぐ向いて、左右に振ってみる。


 確かにカップ付きキャミソールの時よりもサポート感は強い。それに身体を動かしても揺れる感じが少ないので気遣いが減りそう。ただ前に突き出る感じは相当なもので、上から覗き込んでも高さが今までと全然違うのが分かった。



「スポーツとか激しく動くとこれでも上下に跳ねるのは止まらないので、その時はスポーツブラをしてもらった方がいいですね。お嬢様はスポーツなにかされてます?」


「いえ、特には」


「そうですか。じゃあそれはまたその時でいいですね」



 そんな感じで他のブラジャーの試着も進んで、結局お出かけ用と家用と夜用で合わせて10枚くらいの大人買い。それから下のパンツって言うかショーツの方も色々合わせて10枚以上を。他にも薄手のスリップとかキャミソールなんかも揃えてしまって、ここだけで数万円一気に飛んでいった。



「ママ、ちょっと買いすぎじゃない?」


「なに言ってるの、毎日替えないといけないものだしこれでもギリギリよ。だいじょうぶだいじょうぶ」



 大人買いでショップのポイントカードも一気に貯まって商品券が出てくる始末。お帰りは店員さんみんなに揃ってお見送りされてしまって、なんだか恥ずかしい。



「さて、と。次は普段着ね。と、その前に、ゆうきちゃん、そろそろお腹空かない?」


 ママのそんな言葉にボクは驚く。


「え? もうお昼になってる?」


「えーとね、今11時50分ぐらいね」


 ママがスマホを開いて時間を見る。


 インナーショップでいつの間にか二時間近く粘っていたらしい。

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