第3章 思惑、交叉する

第24話 破壊神ちゃんサイズを測る


 そんな訳で翌日。


 今日は土曜日でパパのお仕事はお休み。ママも勤務シフトの関係でお休みに。そしてボクは朝からママのレクチャー付きで身支度を整えて。


 初めての外へのお出かけなのでUV対策もしっかり。

 髪も長さを生かしてサイド三つ編みからのハイポニーテールとママは言ってたけれど、うん、よく分からないけど耳の上がスッキリして良い感じ。


 洋服は相変わらずママの物を借りていて、上は初夏らしい白のTシャツっていうかカットソー、下はカーキ色のガウチョパンツ。なんて分かってそうにお伝えしてるけど、全部ママからの受け売り。でもスカートじゃなくてズボンっていうかロングパンツなので、着た感じ馴染みのある雰囲気で、これならスカートと違って恥ずかしい感じはしなさそうでもあって。



「じゃあパパ、行ってきます」


「ああ、気をつけてねえ」


「お昼は外で食べてきちゃうから、パパは適当に食べてて下さいね」


「ああ、分かったよママ」



 そんな会話を交わしながら、パパはかまちの上からお見送り。そしてボクはママの運転する軽自動車に乗り込んで出発した。


 今日は少し遠くのショッピングセンターに行く事になってる。


 ママによると、近所のショッピングセンターだとお店の数が少ないからあまり選べないというのと、インナー専門店もあって胸のサイズをきちんと測ってもらえるからっていう理由らしい。



「ゆうきちゃん結構サイズありそうだからね。ちゃんとしておかないとね」


「サイズを測るって事は店員さんの前で裸になるってことだよね?」



 ボクがさすがにそれは恥ずかしいからなんとか回避できないかなって思っていると、どうやら表情にも出ていたようで。ちらっとボクの方を見たママがボクの勘違いをやんわり訂正してくれた。



「そんなに情けない顔しなくても大丈夫よ。今着てるカットソーの上から測るだけだから。

 あ、でもインナーのキャミソールは脱がないとダメね。カップがついてるからね」


「そうなんだ」


 ボクはそれを聞いて少し安心した。


「フィッティングルームはあるはずだから、キャミソールを脱ぐのはそこでできるけど、全部脱がなくてもいいんだよ?」


「え、そうなの?」


 思っていたのと違う説明を受けて、ボクは少し驚いた。


「肩紐だけ肩から抜いて、お腹のあたりに下ろしちゃえば大丈夫。要は胸回りが測れれば良いだけだから。

 それに、今着てるの脱ごうと思ったら大変よ? ガウチョパンツ脱がないとキャミソールを下に脱げないでしょ」


「あっそうか。そうだよ、ね」


「着るときと逆だからね。下から着てるから下に脱がないといけないから」


「うんうん。わかる」



 言われれば納得なのだけど言われないと分からない。まだまだボクには知識が足りないみたいで。


 そんな事を思いながら助手席で揺られるボクを乗せて、車は走っていく。


 窓越しに見える街の景色は今までとちっとも変わりがなくて。ボクだけが違う街、違う世界。でもこのままどんどんこれに馴染んでいくのかな。


 そうであれば良いのだけれど。



§



 30分くらい車に乗ってようやく今日の目的地に着いた。


 大きな大きなショッピングモール。土曜日だけどまだ午前中のせいか、思っていたよりスムーズに駐車場に入ることができた。


 車を置いてママと二人、建物の内へ。

 下りのエスカレーターから見える広い吹き抜けの廊下には、まだまばらなお客さん。


 まずはインナーを見に行くって事で専門店の方へ足を運んだ。



 あたりまえなんだけど、女物のインナーだらけで目のやり場に困ってしまう。その一方でブラジャーなんかはどんな造りになってるのか興味津々で。

 見た目が一応女の子だから、ボクが手に取ってあれこれ見ていても怪しまれないのが良いところ。とはいえ、ヒラヒラのいっぱい付いたこれをボクが実際に身に着けるのかなんて考えると複雑な気持ちになって来る。


 いや、昨日も今日もだけど、簡単にカップが付いてるだけみたいな物でもあるとないとでは楽さ加減が違うのは多少分かってるつもり……、でもやっぱりなんとなく抵抗感が湧いてくる。もうちょっとシンプルなのはないのかな、とか。



「ゆうきちゃん。これなんか似合いそうよね?」


 なんて言ってママが出してきたのはピンク色でヒラヒラが幾重にも付いたいかにもな感じの一品。思わずたじろぐボク。


「えっと、そんな派手なのは似合わない、かも」


 ボクはカーッと恥ずかしくなって俯いてしまって、やっとの事でそう呟くのが精一杯。


「ダメよゆうきちゃん。一つくらいは上下揃いで可愛いのを持っとかないと。なにがあるか分からないしね」



 いえ、なにがあると言うんですかママ。思わず真顔になった心が呟いた。



 そんな事を親子でやっていたらいつの間にか店員さんが横に来ていて、なにかお探しですか? と尋ねてきた。キョドって何も言えないボクに代わって、ママが受け答えする。



「ちょうど良かった、この子のブラサイズを測ってあげて欲しいんですけど」


「そうなんですね。それじゃお嬢様はこちらへどうぞ」


 そう言って店員さんはボクを奥のフィッティングルームに連れて行く。


 ママから事前に教えてもらっているとは言え、実際にやるとなるとやっぱり緊張してしまう。念のため、キャミソールを下ろすだけで良いか店員さんに尋ねてみたら、それで良いですよと返事がもらえたので一安心した。



 ひとつめのカーテンのさらに向こう側、フィッティングルームのカーテンが閉められて、ここからはボク一人。思い切ってカットソーをざっと脱いでしまって、それから肩紐を抜きに掛かる。思っていたよりもあっさりと肩紐抜きはできて、露わになるボクの双丘。


 キャミソールをおなかの方に寄せて、その上からカットソーを被った。

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