間話の1 生成神の観察日記
ワタシは生成神。
この世界の法則をつかさどる二人の神の片方。
もう一人いる神は破壊神。
少し前から居所が掴めなくなってしまっていた破壊神だけど、最近やっとその気配を見つけたの。
彼は現地の住民達には地球と呼ばれる星にある、龍の形をした島のどこかにいるっぽい。
とりあえず神の姿のままで、住民たちに気付かれないようにこっそり調査を進めていたのだけれど、その龍の形をした島の真ん中ら辺に彼が暮らしていることが分かった。一人の人間として。
そして彼はまだ子供の姿。この星の人々の数え方で14歳だという。
子供のせいか身体がまだ未熟で、見るからに頼りなさそうな感じ。でもそんな姿でも破壊神は破壊神。きっと力を出せば昔のように頼れる存在になるに違いないわ。
どうやら今、彼は人間として重要な時期にさしかかっているらしい。
この星の人間には何度かある事のようで、年齢が上がるにつれてより良い環境を求めて試験を受けて、その結果で振り分ける、という事をするらしい。
別にそんな事をしなくても優れた者は勝手に上がってくるし、そうでない者はそれなりに収まると思うのだけれど、人間たちはどうやらそういう考えではないようで。
それに私の考えている優れた者と、人間たちの考えている優れた者っていうのにもだいぶ違いがあるみたいで。
そんな訳で破壊神は今や人間の中学生という存在で、これから高校受験という試験に臨む時期にさしかかってる。
待ったところで大した時間ではないし、それに試験の結果がどうなるのか興味もあったから、ワタシはそのまま観察を続けることにしたの。
観察していたら龍の島の季節は秋から冬になったみたい。木々の緑がくすんでしまったのでそれとわかる程度だけど。
彼の住むあたりはとにかく人間が多い。細かなフジツボみたいにびっしりと家が建ち並ぶ様子は少しばかりおぞましさすら感じてしまう。
こういう細かい出っ張りがびっしり並んでるのって、冷静に見れば見るほど背中のあたりがゾワァってなってしまって。
こう、思わずぜーんぶ引っぺがして更地にしてしまいたくなる、そんな衝動すら湧き上がりそうに……。
……いえ、そんな事はどうでもいいわね。気にしたら負け。
当の彼はと言えば、毎日中学校に通いながら、夜は夜で別の学校に通っている。
本当に良く続くわねえと感心せざるを得ないのだけれど、同じ年頃の他の人間たちも似たようなもので、ホントに人間ってどうかしてる。
そんな日々が続いて、彼の住む街が珍しく白く包まれて。それもなくなって少しばかり太陽の光の強さが戻ってきた頃、その試験の結果が出たみたいで。
彼はすごく喜んでいた。
どうやら目標は達成できたらしい。
その喜びっぷりに、ワタシもつられて嬉しくなって。ついつい地上に降りて間近でその様子をつぶさに観察してみたりした。
四角く白い建物の前に、黒い服を着た、彼と同じくらいの背格好の人間が集まってわいわい声を出している。
中には肩を落としてトボトボと帰って行く人間もいる。きっとあれは上手くいかなかったんだろう。
その一方で破壊神の彼は今までに見たことのないような喜びっぷりで、周りにいる他の子供たちと楽しそうに話をしていた。
その様子を見ているとなんだかワタシもウキウキした気分になってきて、楽しそうな彼の隣に一緒にいたいなあ、なんて考えてしまっていた。
「そうよ、近くにいたらいいんじゃない」
ワタシはそう思いついて、この試験の結果に少しばかりの細工を施したの。
それから、ワタシの居場所もちゃんと作った。
この星の人間として生活するために。
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