第7話 それは冗談にしても笑えない
時間を確認して服も制服に変えて準備は整ったので、学校に戻る事にした。
玄関の鍵を先ほどと同じようにお願いで掛けると、ボクは玄関先から直接高空へ舞い上がる。
ほぼ一瞬で鳥も飛ばないくらいの高さにたどり着くと、そこから学校の方角に飛んでいく。手をわざと広げて、鳥が飛んでいるように見せかけて。
車がゴマ粒に見えるくらいの高度を飛んでいるけど、街の喧騒が案外と大きく耳に入ってくる。それによく目をこらすと道を歩いてる人の姿も結構はっきりと見える。
なんだか耳も目もものすごく感度が上がってる気がする。これもやっぱり破壊神とやらになっちゃったせいなのかな。
今のところサイレンの音なんかは聞こえていないし、パトカーの姿も見えてないので騒ぎにはなっていないみたいだ。
それにしても、飛んだはいいけどどうやって地上に降りたら良いんだろう?
学校にはまだ人がいるだろうから、ゆっくり降りていくと目について騒ぎになりそうだ。だからといって闇雲に急降下して校舎にぶつかったらまずいだろうと思う、特に校舎が。
なんとなくだけど今のボクなら建物に当たっても負ける気はしないんだよね。
そんな心配をしつつも調子よく飛んでいたら、寄り道をしなかったせいか思っていたより早く学校上空にたどり着く。
グランドでは野球部やサッカー部がまだ練習をしているのか、芥子粒みたいに小さい人が動いてる。
そして生成神の彼女が飛びかかってくるようなこともなくて、少しホッとした。
飛びながら色々考えたけど、高空から一気に校舎の屋上の高さめがけて降りる事にした。
それくらいならコントロールできるだろうし、中庭をターゲットにするなら少々高さを間違えても大事にはならないだろうと。
そしてそのもくろみは当たって、ボクは無事に校舎屋上に舞い降りた。
屋上の様子は昼にここから飛んだ時と違って、フェンスも無事だし出入り口の扉も壊れていなかった。
「あれ? 壊れてないね……生成神さんが直したのかな」
不思議に思いつつ、ボクは靴をスニーカーから上履きに変えて、屋上から階段を降りて自分の教室へ向かう。
校舎の中はもう残っている生徒もいなくて静まりかえっていた。外からは運動部のかけ声なんかが聞こえてくるけど、それももうまばらだ。もちろんすれ違う生徒もいない。
日が傾き始めて灯りもついていない廊下は少し薄暗くて。そういえばこんな時間になるまで学校に残っていたことはなかったと初めて気がついた。
昼間とは違う校舎の雰囲気はなんとなく違和感を覚える。
一年四組の教室にたどり着いた。
扉を開けて中の様子を窺うけど、もちろんここにも他の生徒の姿はない。ボクの席は窓際の後ろから3番目。念のため生成神の彼女が出てこないか警戒しつつ、自分の席にゆっくりと近づいた。
ところが、教室の自分の机の上にも中にも、荷物も教科書も何も残っていなかった。ロッカーも見てみたけどなにもない。
誰かが持って行ったのか、それとも職員室にでも保管してあるのか。
不思議に思いつつも、午後欠席してしまった事も報告しに職員室に向かった。
「失礼しまーす。一年四組の
職員室の扉を開けて、そう声を出す。
見渡すと担任の先生がまだ机で仕事をしていた。
「工藤先生、いらっしゃいますか」
ボクがそう呼ぶと、担任の工藤先生がこちらを向いた。
それを見てとことこと近づいて先生のそばに立つと、先生は信じられない事を言った。
「……うちのクラスに財部という生徒はいないんだけど。キミは誰ですか?」
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