第3話 始まりの村



気を失って、どれくらいの時間がたったのだろう。


なんだか、あったかくて、フワフワしてて・・・それに、ポヨンポヨンってなんだか包まれるような感覚だな・・・。



『起きたのか?それなら、その///そろそろはなれてほしいんだが・・・。』



へ?この人は何言ってんだろう。



『ううーん、良く寝たなあ。』


『ひゃあ!!や、やっぱり、奴隷ってこういう事なんですかっ!?』


『だからさっきから何言って・・・・・・・・・・・・・・・!!?』



俺はようやく事態に気付いたんだ。



━━そう、



ほぼハダカ同然の女の子たちにかこまれてることに!!


俺の頭は大きなおっぱいに包まれて、背伸びをした瞬間両サイドの手がそれぞれのおっぱいにジャストフィットォォォ!!


『修也さまぁ💢嬉しそうですねぇ?そんなにお元気なら逆にエネルギー吸いとっちゃおうかなぁー?。』


両手を俺にかざして『ヒーリング』(回復魔法)をかけてくれていたシェイリーが怒っている。


ちなみに右手は見事にシェイリーの胸を左手はオリーブの胸をとらえていたみたいだ。


『ご、ごごごごごゴメンて!み、みんなもわざとじゃなかったんだ!!』


そういうと俺は女性陣からパッと離れる。

すると、視界に入ったのはシェイリーとオリーブ、アシュリーだった。


『あれ、シイナは?』


『シイナなら、修也殿に元気をつけて貰いたいからって、自分達が育てている野菜を採りにいったよ。もうそろそろ帰って━━。』


アシュリーがそう説明してくれていたそのとき、



『おーい!お野菜、採ってきたよー!!』



まだ薄暗い丘の向こうから、両手いっぱいに野菜を抱えたシイナが戻ってきた。


『よし、みんなが揃ったところで改めてお礼を言わせて貰うよ。修也殿、本当に助かった。ありがとう。』



アシュリーがそう言うと、3人共頭をさげてくれた。


『お兄ちゃん以外で男の人を初めてカッコいいって思ったよー!修也お兄ちゃん、ありがとねっ!チュッ///』


!!!


なんか、一瞬ピリッとした空気が流れたようなんだが?


視界がはっきりしてきたことで、三人共かなりの美少女だったことに気付いた。


まずは、ベルム農家のアシュリーだが、オレンジ色の長い髪をリボンで結んだポニーテール。キリッとした瞳は金色で、まさに、オレンジ畑の化身のような女性だ。たわわに実るふくよかな胸、それとは裏腹に華奢なボディ。


うーん、御馳走様です!(・`д・´)キリッ



続いてオリーブは、緑の美しく長い髪、まつげが長く、優しそうなタレ目、口元のホクロがセクシーだ。この中では1番お姉さんのようだ。


と言っても俺よりは10歳は離れているけどね。


そしてシイナ。

黒髪のショートヘアーにはキューティクルがきいていて、前髪をとめている花の形ヘアピンがとてもよく似合っている。自慢の野菜をみんなに紹介するその笑顔は、たとえ泥んこでも絵になる美少女だ。




『み、みんなが無事で良かったよ、な?シェイリー。』


俺は一瞬、三人に見とれてしまったが、気付かれないようにすぐにシェイリーに話を振る。


『はいっ!本当に良かったです!私、毎日毎日不安で、祈ることしか出来なかったから。本当に・・・』


シェイリー心からの笑顔で微笑んでくれた。

そして、俺は思ったんだ。



かあいいいいいいい!!!!!!!!

シェイリーの可愛さは特別だあ/////////



うーん、結果照れてしまった。



『あのー、ところで・・・。』



オリーブがモジモジしながら言葉を切り出す。



『私たち、魔獣化仕掛けたときのボロボロの服のまんまなんですよね///そろそろ服を着ないと恥ずかしいのですが・・・』


『だよな、私もそろそろ服が着たいのだが///


『えー?シイナは涼しくていいんだけどなー。』


シイナの子供らしい言葉にすぐさまシェイリーが女性としての振る舞いを説く。


『ダメですよシイナ。世の中の男性たちはオオカミさんなんです。優しい顔していても、心の中は━━ねぇ、修也サマァ?』


『なんでこっちを見て言うんだよっ!?』



シェイリーのやつ、まだ怒ってるみたいだ。

あれは絶対にわざとじゃなかったんだよう。

まあ、幸せでしたけどね!!!



『ではシェイリー、またあとで行きますね。』


『私もあとで採れたてのベルムとベルムジャムをもって来るよ。』


『シイナもお兄ちゃん呼んでくる!』



三人がシェイリーにそう言うと、それぞれの家に戻って行く。


『なぁ、シェイリー。みんなまた後で来るみたいなこと言ってたけど、後でなんかあるのか?』


『え?あ、まぁ。でも、ヒミツです。さぁ、急いで帰りましょう!忙しくなりそうですから・・・』


そう言うとシェイリーは俺の手を握ると、また例の転移魔法を繰り出した。


あぁ、このパターンね。

はいはいわかってますよ。

空間転移魔法の魔方陣は上空に現れて、上に引っ張られ・・・横おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?????



『パターンがあるなら、言ってくれよシェイリーさん・・・』



『ごめんなさい!私ったらつい・・・だ、大丈夫ですかっ?』



シェイリーは力が抜けてカクカクしている俺の両肩を持ち、ブンブンと俺の体を揺さぶった。



だからそれ、逆効果なんだって・・・はぁってあれ?なんかシェイリーの家のまわりに人が集まっているよーな。



『お!おいみんなー!勇者様のお帰りだぁー!!』


村人のひとりが俺たちに気が付くと、みんな次々に集まってきた。


そして、その集まりの奥から二人の女性と一人の男性が出てきた。


『私は、オリーブの母親でございます!勇者様、娘を私のたった一人の大事な娘を、魔王から救って頂き、ありがとうございます!』


『勇者様。私たち夫婦はアシュリーの親でございます。私たちからも、お礼を言わせてください。うちの子を助けて頂いてありがとうございます!心より感謝致します!!』


二人の母親は泣きながら俺に深々と頭をさげてくれる。

アシュリーの父親は俺に手を差し出し、ぎゅっとかたい握手をしてくれた。



『え、でもみんな魔獣化のことはしらなかったんじゃ・・・?』


『いいえ、勇者様。実はみんな知っておりました。』


アシュリーの親父さんは申し訳なさそうにそう話すと、目線を落として真相を話し出した。


『だって、あのとき・・・、あの魔王たちが現れたとき、私たちは見たんですから。バイロンの飛ばしたあの恐ろしい黒羽根が私たちの娘にあたる瞬間を。そして、魔獣化する我が子を・・・。悔しかったが、私にはなにもできなかった。ジルク様がいなければ、今頃は・・・。』


親父さんが涙ながらに教えてくれたその光景が、とても悲惨なものだったことは想像では計り知れない。


しかし、目の前で我が子が変わり果てる瞬間を目の当たりにした親御さんたちの悔しさや怒り思いは俺にでも想像できる。



そして、また俺の中の『怒り』がフツフツと煮えたぎるのを感じていた。


『ジルク様の提案で、みんなで娘たちが魔獣化する事実を話さないようにしてくれたんです。娘たちの心を気付けないように、と。』



なるほど・・・ね。


大きな木にめり込んだ家の扉がギィーッと開いた。


『さて、そろそろその話は切り上げるとしようじゃないか。もうじき、あの子達も帰ってくるだろう。』



『『『ジルク様っ!!』』』



集まった村人の目線の先にはジルクさんが立っていた。


『それに、みなが勇者様に伝えたいことは他にもあるだろう。』



『伝えたいことって?なんです、ジルクさん。』



ジルクさんのそばにはシェイリーがそっと寄り添って、肩を支えている。


『でも、ジルク様!本当に良いのですか!?』


村人の一人がそう叫ぶと、他の村人たちも口々にジルクさんになにかを問う。


『・・・いいんだ。それに、さっきみなの意見は合致したではないか。』


ゴホンと大きく咳払いしたジルクさんが俺をまっすぐ見つめる。



『勇者、修也様。折り入ってお願いがあるのです。改めて、私たちと契約を交わして頂きたい。この村の長に・・・いや、領主となってこの村を治めていただきたいのです!!これは、村の者「総意」の意見です。』



は?今なんて言った?


え?ええええっ!!!!??



『ちょっと待ってよジルクさん!この村にはあなたがいるじゃないですか!?ってか、最近までただの営業マンだったんですよ俺!それに、領主って・・・アズール村はエイトフィールド国領じゃないですか!そんなのダメですよ!!』


『あー、そのことなんじゃが、修也様。我々は一時的にエイトフィールド国領から独立を宣言することに致しました。今の国王は魔王のいいなりじゃ。我々の愛した国王ではありません・・・。ならば、我らアズールの民、国王とエイトフィールド国領を魔王から取り戻すまでの間、この国と戦う決意なのです。』


並々ならぬ覚悟と決意がジルクさんの目から伝わってくる。



でも、俺なんかにそんな大役・・・。


『大丈夫です!修也様!あなたのサポートはこの私がしっかりと勤めさせて頂きます。それに修也様の営業マンとしての素晴らしい話術、人身掌握術、人の気持ちを思いやる心、いざというときの度胸・・・私たちの領主様にふさわしいと、今やアズールの誰もが思っています!!』


シェイリーは目を輝かせて訴える。

おいおい・・・そんなにジルクさんの肩を掴んだ手に力を入れるとジルクさんかわいそうだぞ?


『あのー?』

『私たちを忘れていませんか?』

『修也お兄ちゃんが領主様になってくれるのー?』


どうやらオリーブたちが戻ってきたようだ。


『修也殿がアズールの領主様になるのなら、ぜひ私たちを護衛としてお供させて頂きたい。』


アシュリーは俺の前で膝まずいた。


『この村を守る為に、魔力化の呪いを浄化して「新たな力」を私たちに授けてくださったんですよね、修也様?』


続いてオリーブが膝まずく。


『私はまだまだ子供だけど、修也お兄ちゃん・・・じゃなかった!修也様とこの村の為に、頑張って戦うよっ!だって私たち、修也様の奴隷だもんねっ♪』


シイナまで並んで膝まずいた。


おーい、シイナさん?

村人たちがザワザワしてるよ?


『あれは仕方がなかったんだよぉ( ;∀;)』



でも、そう。

俺は三人に『新たな力』を与えていた。


『魔獣化』という魔王配下の悪魔、バイロンが仕掛けた呪いは、これから先、「人々を傷つける」ものではなく、「人々を守るもの」になるんだ。


『シイナ、オリーブ、アシュリー、もう気付いてたんだね!!一回くらいは試してみたのかい?』


『いえ、まだですわ修也様。それにこの力は修也様のご命令でのみ、発動するしくみになっているようですし・・・。』


オリーブの言うとおりだった。

そう言えば、暴走を防ぐために発動条件は俺の命令でのみにしてたんだった。


『あー、だったら三人ともここで見せてくれないか?・・・大丈夫!魔獣化のような恐ろしい姿にはならないよ。』


それに、みんながいる今こそ、この三人の新しい力を見せて、町のみんなに受け入れて貰いたいし。


『修也殿にはなにか考えがあるようだな・・・オリーブ、シイナ、修也殿の初のご命令だ。いけるか?』


『『もちろん!!』』


よーし!!


『我が契約の下、汝らの新たなる力を解放する!セイクリッド・ビースト!!(聖獣化)』



おおお!!

村人たちがざわめきだす。

驚いてはいるが、怖がってはいないようだ。


オリーブを緑色の光、アシュリーを赤い光、シイナは水色の光を浴びて、その乙女の体を変化させていく。


『まずはアシュリーだっ!!』


俺がそう叫ぶと、アシュリーの四肢は筋骨隆々の白馬になり、全長は3メートルになろうかという大きさになった。

もちろん、からだの大きさに比例してアシュリーの胸も魅力的なサイズから超!魅惑的なサイズへと進化する。

上半身には頑丈な鉄の鎧を纏い、美しい金色の髪は輝きを増してさらに長くなる。

そして、最後には体に刻まれた紋章が消え、代わりに額の中央に水晶のようなものが浮き出てくる。


『修也様っ!修也様っ!!アシュリーさんのあのお姿はいったいなんなのでしょう!?』


シェイリーは圧倒されつつも、アシュリーの勇ましいその姿を見て、とても興奮しているようだ。


『あれは、俺の元いた世界の空想上の伝説の英雄「ケルベロス」だ。とても勇敢でとても強い戦士なんだ。』


『ケルベロス・・・さん。アシュリーさんカッコいいですっ!!』


『次はオリーブ!森の番人にして大樹の精霊、ドライアドだ!!』


美しい緑色の髪が植物が成長するかのようにグングン伸びると、オリーブの体全体を包み込む。

まるで巨大な植物の種の様に包み込まれたオリーブから、白く強い光が放たれたかと思うと、白いローブを纏い、頭に植物の弦と葉っぱで出来た王冠を被った、大きくなったオリーブが現れた。アシュリーと同じように額の中央には緑色の水晶のようなものが現れる。

オリーブが右手を天にかざすと、弦が巻き付いた大きな杖が現れて、それを振りかざした瞬間、オリーブの両足は大きな樹木となった。


『そして、最後はシイナッ!お前は俺の世界の俺が住んでいた国の大妖怪「九尾の狐」だっ!!』


そうシイナに呼びかけると、シイナは空に向かって大きく『コーンッ!!』と吠えると、額の中央に水晶が現れた。あどけない少女だった顔や体は美しい女性そのものとなり、同時に、黒髪は白くなり、地面に着くほど長くなった。着ていた服がみるみる変わっていき、神社の巫女さんスタイルになると、最後に美しく白銀に輝く9本の尻尾を生やして見せた。




よし、成功だ!!

魔獣化の呪いの術式を少しだけいじったんだ。


『これより、我ら三聖獣者、我らが主、修也様の使いとして、心身ともに忠誠を誓います。』

『ぜひ、私たちの主として、この村を救う勇者として、御領主となることをご了承頂きたく思います。』

『そして、その異世界のお知恵を布教して頂き、我らに魔王と対立する勇気と力を与えて頂きとうございます!』



まあこの三人がいれば、この村は大丈夫だろうと思ったんだが・・・


だが正直、この村の問題点はそれだけじゃないんだよなぁ。


まだ異世界召喚されたばかりだけど、この世界は見た目こそ中世ヨーロッパだが、その文明はそこまで追い付いていないことはすぐにわかった。


まずは経済の水準が低すぎる、そのせいでこの村の経済はいつまでも潤う事がなく、教育施設も無いために、殆どの人間は字すら書けない・・・。読み書きといった基本教育に魔法指導や産業指導を取り入れることが出来れば、きっと村人自身で自警団や商業組合などのシステムを作り出すことが出来るはずだ。



それになあ、これだけ期待されたら断れないよなあ。


わかりましたよ、やりますよ。

俺には持ち前のトーク力がある。

この村から始めてやるよ!!



『わかりました!ジルクさん、村民の皆さん!!俺、アズール村の領主になります!』


『おお!!受けてくださいますか!!』

『『『うおおおおおーーーっっ!!!』』』


ジルクさんが安堵の表情を浮かべると、村人は歓喜をあげた。


『では、さっそくなんですが・・・』


俺が村民に呼びかけると、騒がしかった民衆が一瞬で静まり返る。


『アズール村を魔王から守る為、また村を発展させ収益をあげる為の人事を発表したいと思います!!!』




こうして、俺の勇者ライフはいきなり領主ライフとして、この村から始まったんだ。
























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