第2話 ゆううつ
クラスメートにも慣れ、ブレザーを着てる人を見かけなくなった5月の中頃、
じゃあ、席替えでもするぞー。なんて、先生の気まぐれで席替えをすることに。
もともと人見知りで、今の席でなんとか周りの人と話せるようになったというのに...
こんなにすぐ席替えする意味ってないと思いません?なんて言えるわけもなく、
自分の席はどこだろうと、くじに書いている番号を見るが、
「...じゅ、15番?!」
まん真ん中の1番前。先生にたくさん指されちゃうじゃん!!
今までは後ろの席だったからちょっと寝ちゃってても大丈夫だったのに...
しかも隣は両方男子。話せるようになる気がしない。もうやだ。本当にやばい。
明日から学校に来たくないレベルでやばい。
「梨央どうだった〜?」
同じ吹奏楽部でクラリネットを吹いている、中学からの友達である
「うちの隣がね、_________。」
いいな、杏夾は楽しそうな席で。両隣も後ろも女の子らしい。
別にうちは席替えなんてしなくてよかったのに。前の席が良かった。
席替えなんて運だから恨んだりはしないけど、羨ましいとは思う。
っていうか、そんな呑気にしてる余裕なんてないじゃん!!私の席が______
「邪魔。どいて。俺の席の前で騒がないで。」
_____。
......うそ、最悪。コイツが後ろとかありえない。
杏夾と話してて邪魔してきたこいつは、
口が悪くて態度がデカい。そのくせ、頭は良いいし運動もできるみたいだから、先生からの信頼も厚いんだって。付け加えると顔も整っている...
認めたくはないけど、何一つ勝てる気がしない。
頭の良さは平均中の平均。運動に関しては平均以下。
身長が高いことを隠したいと思っていたら、いつの間にか癖になってしまった猫背。
真っ黒でバサバサしている髪の毛。
コンプレックスばかりの私なんかの後ろに、絶対にいて欲しくない人。
自分よりも高い目線から低い声で淡々と文句を言われるのは怖い。
感情的に怒鳴られるよりも、冷静に諭されるようにキレられるのは本当に怖い。
しかもコイツ、自分に自信があるからなのか、話すときは必ず目線を合わせてくる。
人からどう思われているか、嫌われないか。常に周りの目を気にして行動している私は、心の中を見透かされていそうでとにかく怖い。
そんなやつの前の席でこれから学校生活を送らなきゃいけない、と思っただけでもう帰りたい。これからの学校生活を想像しただけで息が詰まりそう。
普通の人からしたら席替えぐらいなんともないのかもしれないけれど、私はとにかく重大事。
私だって、コンプレックスがなくて常にキラキラしているような女の子に生まれたかった。
ちなみに、無愛想なところもクールな感じで好き。と彼のことを好きな女子は意外といるらしいけれど、できるもんなら代わってあげたい。いや、頼むから代わってほしい。うちにあの席はしんどい。
ただでさえ行きたくなかった学校は、足を踏み込むことすら億劫に感じる場所になってしまった。
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