Ⅶ
春の木漏れ日降り注ぐ、薔薇園の
白いテーブルの上には、高貴な香りのストレートティーと、クリームたっぷりの苺のショートケーキが乗っていて。
「さあ殿下、あーんして下さいな」
「ばか、ケーキくらい、自分で食べられるわよ」
「だめ、私が食べさせて差し上げたいんです♪」
仕方なく、口を開けてあげる。
口に広がるふわふわのクリームは、しつこくない甘さがほど良くて、つい頬が緩んでしまう美味しさだ。
「ふふ、美味しいですか?」
「ま、まあ、悪くはないわ」
そんな強がりも、きっと見透かされてる。
柔和な笑顔で、ロザリアは何のてらいもなく言う。
「お気に召したら、嬉しいですわ。愛情を、たっぷり込めましたもの」
「……あ」
そんな
代わりにぽろりと涙が頬を伝った。
「で、殿下!?」
ロザリアも驚いているが、ミアリスはそれ以上に戸惑っていた。
(な、何で……?)
こんなに胸が熱いのは何故。
濡れる目元をごしごしと拭きながら、ミアリスは思い出す。
(そうだ、この味。母様みたいなんだ)
忘れていた、いえ、忘れようとしていた。
無私の愛情が込められた味。こんなの、いつぶりだったろう。
「娼婦の娘」と貴族達には蔑まれ、第三皇女ゆえに平民出身の人々も踏み込んでこない。
そんな心の扉が、こじ開けられてしまう。
(やめて、私なんか、ほんとに何も無いのだから)
心が裸にされる。
さらけ出されてしまう。
「殿下、大丈夫ですか?」
「か、勘違いしないでよね。これは風で眼にごみが入っただけなんだから!」
……ああ、きっとこの強がりも見透かされてる。
ほら、その証拠にロザリアは。
「ふふ、ではそういうことにしておきますね」
優しく笑って。
「ほら、殿下。ほっぺにクリーム付いてますわ」
……ちゅっ。頬に甘い
不思議とミアリスは、拒絶しようと思わなかった。
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