第八幕
「ただいまあ」
靴を脱ぎ、ランドセルを自分の部屋に置き、リビングに行く。
ちょうどお母さんが電話の受話器を置いていた。
「おかえり
別にお母さんに電話しなくても良いのにという思いと、嬉しい思いがごちゃごちゃになって、少し照れた。
「うん…。お母さん、おやつ何?」
「まずは手を洗ってきなさい」
「お父さんにも伝えなきゃね〜。明日の勇気のこと」
おやつを食べながらお母さんが言った。
「ええ?そんな大げさだよ」
「そお?お母さんはとっても嬉しいし、すごく大事なことだと思ってるのよ」
「そうかなあ?そういえば、お父さんは今どこにいるの?」
「今はモザンビークっていう国よ」
「そうなんだ。モザンビークってどこにあるの?アフリカ?」
「そうよ。アフリカの東側にあるわ」
「お父さんってモザンビークで何してるの?」
なんだか今日は頭がスッキリしていて、いろんなことを知りたがってしまう。
「お父さんはねえ、現地の病気の人を診たり、子どもにお勉強を教えたりしているのよ」
「そうなんだあ。なんだか大変そうだね」
「きっとすごく大変なお仕事だと思うわよ。でもね、お父さん、それが好きなんですって」
「大変なことが好きなんて、なんか変だね。あ、それに、今の仕事してるからおじいちゃまに嫌われちゃったんでしょ?」
「ふふ。よく知ってるわねえ」
「お父さん、前に帰ってきた時言ってた」
「ま、難しいところね。お父さんにはお父さんの、おじいちゃまにはおじいちゃまの想いがあって、しかも二人ともお互いが大好きだから、喧嘩しちゃうのよ」
「大好きなのに喧嘩しちゃうの?」
「そ。そういうこともあるのよ」
「ふ〜ん」
いつもなら気にも留めないのに、リビングに飾ってある写真の一つが急に目に入ってきた。
そこには、空を見上げているような格好の女の子、少し肌が焦げ茶色の女の子が写っていた。
「お母さん、この写真…」
「それは、まだあなたが産まれる前にお父さんが働いていた、マラウイっていう国で出会った女の子らしいわよ」
「マラウイ?ほんとにマラウイ?」
「ええ、そうよ。お母さん達が結婚するちょっと前までお父さんが行っていたのはマラウイだったから。間違いないわよ」
マワさんは、マラウイから来たって言ってた。
何かの偶然かもしれないけど、何かの運命かもしれない。
マワさんは、あのコインはどこに行ってしまったのだろう?
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