第七幕

「わたしは、けいごく…、高木さんに注意しただけなんです。ホウキを振り回したら危ないって」


山本先生に促され、下を向きながらだけど、一生懸命勇気を振り絞ってみんなの前で話した。


「高木さん、みなさん、三枝木さんの言っていることはどうですか?正しいですか?」


ぼそぼそと、声が上がり、

「わたし、高木さんがやっているのを見ました」

という女子の声が聞こえた。


「高木さん、本当ですか?」


「…はい。僕がやりました…。ごめんなさい。三枝木さんのせいにして悪かったと思っています」

けいごくんは俯き、目の下に指を当てながら言った。


「そうですか。高木さん、自分から謝れて、とても素晴らしいですね。皆さんも、本当のことを教えてくれてありがとう。そして、三枝木さん、勇気を持って話をしてくれて先生はとても嬉しかったです」



朝、登校するなり、職員室に行き、山本先生に金曜日のことを、言えなかったことを話した。すると先生は、とても喜んでいるように見えた。

そして、1時間目の学活で、そのことをみんなの前で話してくれますか?と言ってきた。

すごくドキドキしたけれど、自分が伝えたいことを勇気をもって伝えなきゃと思ったから、話しますと約束した。




帰り道、明日あすかはまた公園に寄り道をした。今日は、嫌な気持ちではなくて、とても嬉しい気分で公園に来た。

公園に行けば、マワさんに会えるんじゃないかって思って。マワさんに、今日のことを伝えたくて。

ところが、公園にマワさんは現れなかった。


とても残念に思い、ひとりでブランコを漕いでいると、ふと滑り台が目に入った。

そういえば、あのコイン、交番に届けたコインはどうなったのだろう?あれはマワさんにとってなんだったのだろう?

気になり、交番に行ってみることにした。


「あのぉ。先週の金曜日にわたしが届けたコインは、どうなりましたか?」

話しかけたお巡りさんは、あの時のお兄さんとは違っていた。


「こんにちは、お嬢ちゃん。コインを届けてくれていたのかな?どんなコインだった?」

と言いながら、何か紙がいっぱい入っているものをぺらぺらとめくりながら聞いてきた。


「えーと、鳥とライオンの絵が書いてあるコインです」


「先週の金曜日?うーん…、そういうものが届けられたっていう書類が見当たらないなあ。どうしたんだろうねえ…?」


「そうですかぁ…。わかりました。ありがとうございます。さようなら」


「さようなら。何か困ったことあがったら、またいつでもおいで」


どうしてだろう?先週の金曜日にコインを届けたはずなのに。マワさんもコインもどこへ行ってしまったんだろう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る