第四幕

これはきっと、神様の思し召しだ。

公園の名前はわからなかったが、真ん中に象の形をした遊具があった。


小さい頃からよく見ていた象。本物に比べるとずんぐりと太っているが、きっと日本の象はこれくらい太っているのだろう。


ブランコに座り空を眺める。


『空は繋がっているよ』


小さい頃に言われた言葉を思い出し、ポケットの中のコインを握りしめる。

とうとう見つからなかったな。もう明日には帰国しなければならない。短期ビザを手に入れるために、ちょっとした裏の力を借りなければならなかったが、どうしても日本に来たかったのだ。そして、会いたい人がいたのだ。だが、もう時間がない。


滲んだ空から視線を下ろし、前を見つめると、女の子がこちらに歩いて来るのが見えた。視線が合う。

ランドセルを背負っているので小学生だろう。


よしっ、決めた。

女の子の方に近づき、話しかけてみた。

はじめは驚き、怖がっていたが、こちらが悪い人じゃないと思ってくれたみたいだ。


「このコインをね、向こうにある交番に届けて欲しいんだ。そして、そうだな、そこの滑り台で拾ったって言って欲しい。私のことは言わないで欲しいんだ」


女の子は、困惑してはいたが、わかったと言い、コインを握り締めて交番の方へ歩いていった。

それを見届けると、幾らかの無念は残っているが、できることはやったと思えた。


どうか、どうかあの人の元へ、想いが届きますように…。


私は日本に来たよ…。

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