第二幕

昨日は楽しい夜だった。


店を閉めたのが21時。ウイルス禍のせいで、深夜の営業は自粛していた。いつもなら閉店後の21時から翌日の仕込みをするのだが、今日は営業しながら仕込みをした。22時から学生時代からの友人たちとの飲み会が予定されていたのだ。

ウイルス禍も少し下火になってきたので、少しくらいパーっと遊んだって良いだろ?と声をかけ合ったのだった。


50代になった男ばかりが6人、駅のそばの居酒屋チェーン店で一次会を行い、日をまたぐ頃に二次会でカラオケに行った。


学生の頃からずっと変わらぬレパートリーで歌を歌う。見た目はおっさんになったけど、俺たち全然変わらねーなと話す。

会話の内容だって相変わらずの、あの頃のクラスの女の子の話だ。当の女の子も当然おばさんになっているにもかかわらず。


30年以上前からトリの定番曲も変わらず、皆で歌い、飛び回った。

若い頃よりも重力を多く受けるようになった体は、若い頃のようには制御が効かず、ソファーから飛び跳ね床に着地したとき派手に転び背中を打った。

直後に痛みはあったが、酔っ払った男が6人も集まれば、全てが笑いに変わってしまう。


明るくなり始めた朝の街で友人たちと再会の約束をし、店への帰路に着いた。

ひと眠りして、店を開ける準備をしなくてはならない。目覚ましを9:30にセットし、コップいっぱいの水を飲み、布団に倒れこむ。




目覚ましの音で目を覚ます。頭が少し痛い。少し酔っ払っている感じが残っているが、派手に騒いだわりには大したことない。

起き上がろうとすると、背中に激痛が走った。

昨日のアレか…。

到底起き上がれそうもない。仕方ない、今日は閉店だな。

アルバイトに連絡を入れ、休業の旨を伝える。


しばらくすると、連絡した息子と娘が車で店までやってきてくれた。

いい歳こいて何やってんだか、と文句を言いながらも、車に運んでくれ病院へ連れて行ってくれた。

重たいはずの体を軽々と持ち上げる息子。さすが警察官は体を鍛えているようだ。


診察結果は、腰椎の打撲。

しばらく静かにしていてくださいとのことだった。痛みが引くまでは店を開けられない。


子どもたちに送ってもらった自宅では、妻が呆れた顔をして迎えてくれた。


まあ、こうして家族4人昼間から顔を合わせることも最近ではあまりなく、良い機会になったと言えなくもない。

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