喜び

「うわあアアア!」


「きゃあああああ!」


「ぐわあああああ!」


三人は、自分たちの背丈よりも遙かに大きい多いわに追いかけられていた。


一本道の通路で他に逃げ場がなく、道なりに走って行くしかなかった。


「どうすんだよこれえ!」


と体の丈夫そうな源太が大きな声でいう。


「どうしようもない!」


それに負けないくらいの大きな声で六郎が言う。


「あそこに角がある!」


千早がいう。


岩が三人を踏み潰そうと激しく転がり迫る。


三人は全速力で走って、倒れるように角の道に飛び込んだ。


どーん!


大岩が壁に激突する。


三人はハア、ハアと息を切らして、地面に手をついていた。


なんでこんな状況になっているのかというと、六郎が宝の地図を学校で発見したのである。


三人で行ってみようという話になり、地図に従い目的の場所に行くと、罠だらけの洞窟がそこには待ち受けていた。


三人は、その罠をくぐり抜けている途中なのである。


「なあ、あとどれくらい先なんだ」


と源太がいうと


六郎が地図を広げて、


「ここら辺かな」


「あ、見て!」


千早が指を差した。


二人が見ると、宝箱があった。


「行ってみよう」


六郎に続いて二人が立ち上がる。


宝箱の近くにしゃれこうべがあった。


「きゃッ」


それを見て千早が小さく悲鳴をあげる。


六郎はそれに向かって手を合わせた。


「なむなむ」


「なにやってんだよ」


源太が先にいって、宝箱の目の前で手を六郎のように手を合わせた。


「よし、あけるぞ」


「うん」


三人は宝箱に一斉に手をかけてせーので開いた。


宝箱は空だった。


「なんだよー」


「空なの!?」


「えー」


三人はそろって肩を落とす。


「帰るか」


と源太。


「そうだね」


六郎が後ろを向いて立ち止まった。


「どうしたの?」


千早が訊ねる。


「さっきの岩で帰り道が塞がってる……」


三人は立ち止まった。


「どうすんだよ!」


「ここで、この人みたいになるのかな」


千早がしゃれこうべをみると、それは笑っているように彼女の目には見えた。


三人はもう一度地図をみることにした。


しかし、帰る道はなさそうであった。


「ちくしょう!」


源太が地図をぽいと投げる。


「ちょっと」


六郎がそれを拾いにいく。


地図は、水たまりに落ちて濡れてしまっていた。


「あれ……」


濡れた地図には、乾いていた時にはなかった道筋が示されていた。


「これで帰れるよ!」


「やったあ!」


「俺のおかげだな」


と源太は胸をはった。

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