嫁、姑

「あけみさん、このお味噌しるはなんですか」


「お味噌しるですが」


お義母さんが私の朝ごはんに文句を言ってきた。


「これ、沸騰する前に味噌を入れたでしょう」


「めんどくさかったんです」


お義母さんは息を盛大に吐き出した。


「ちゃんと沸騰してから入れないと、香りが立ちませんよ」


お義母さんの声が少し厳しくなった。


「飲めればいいじゃありませんか」


私は味噌汁をすすりながら、言葉を返す。


「料理とは手間です」


というやりとりをいつもやっているのである。


仲が悪いわけでもなければ、良いわけでもない。


「あけみさん」


「なんですかお義母さん」


お義母さんは頭をかかえていた。


「洗濯物は、しわを伸ばして干しなさいと何回言えばわかるの」


「乾けばいいじゃありませんか」


「しわのつき方が違うでしょう」


「アイロンをかけます」


「その手間がはぶけますよ」


こんなことを繰り返している。


トイレでうんこをしていた。


ドアがノックされる。


「あけみさんですね」


くぐもった声が聞こえる。


「はい、お義母さん」


私はそれに応えた。


「いい加減でてもらえますか」


「嫌です」


私は冷たくかえす。


「なぜですか」


「お腹が痛いからです」


「私も限界ですよ」


「我慢してください」


「あけみさんいい加減におし!」


「私だって苦しいのです!」


「あ、あ、あけみさーーーーーーん!」


この後、ちゃんとトイレから出た。


お義母さんと共に銀行にやってきた。


待合の席で二人で座っている。


「この後、ランチでもしましょうか」


「はい、お義母さん」


外だといつも、お義母さんはごちそうしてくれるのだ。


「955番のお客さま」


「呼ばれたのでいってきますね」


私は席をたち、手続きを済ますことにした。


書類を書いていると、


「動くな」


首筋にナイフを突きつけられていた。


冷たい金属の感触が私を動かせなくした。


少しでも男が腕を引いたら、喉から赤い血がでるのだろう。


怖くて声も出せなかった。


「金を出せ」


強盗は向かいにいる女性店員に金を要求した。


回りがざわつく。


「騒ぐなあ!この女の首が飛ぶぞ!」


嫌だ。


皆騒ぐのをやめた。


「あけみさんになにをするのオオオオ!」


お義母さんが強盗の腕をひねりあげて、押さえつけた。


「ぐえええええ」


強盗はうめき声をあげる。


お義母さんは合気道の達人なのである。


その後警察がきて、無事強盗は逮捕された。


「ありがとうございます、お義母さん」


「いいのよ、さ帰りましょ」


二人でランチを食べてから家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る