姉妹

お姉ちゃんはプリマドンナだった。


プリマドンナ、第一の女性。オペラの主役。


いつも、お姉ちゃんを追いかけていた。


歌声は美しく、天使と言われるほどで、公演を見た人は絶賛をする。


いつも、目標だった。


いつも追いかけていた。


敵わないと思っていても、私はやめられなかった。


同じ、学校に入り、同じオペラの劇団に入った。


お姉ちゃんと、同じくらい練習して、おねえちゃんを真似した。


けど、私はおねえちゃんみたいに選ばれなかった。


ある日お姉ちゃんは言った。


「ひろこ、あなたには私にはある喉がない、諦めた方がいい」


そんなことは分かっていた。


どうやっても埋まらない差があった。


悔しかった。


なんで、お姉ちゃんは選ばれて、私は選ばれないのか。


なんで、私にはお姉ちゃんみたいな才能がないのか。


泣いても、なにも変わらない。


そんなことわかっていても、


お姉ちゃんに言われた日、涙を止められなかった。


他の人に言われても、なんともなかった。


気にならなかった。


いや、気にしないようにしていた。


きっとお姉ちゃんみたいになれる。


そう信じていた。


いつかお姉ちゃんを超えられる。


夢見てた。


憧れの存在から言われた言葉が、胸に突き刺さった。


できることならずっと夢を見ていたかった。


夢が覚めてしまった。


それでも、私は他に選ぶ道はなかった。


「いいんですね?」


「お願いします」


私は喉をマシーン手術をした。


人間をやめたのである。


するとどうであろう。


見違えた。


回りの人々が私を評価しだしたのだ。


そんなことはどうでもいい。


私はおねえちゃんに認めて貰いたかった。


私は、プリマドンナになった。


お姉ちゃんから主役を奪ったのだ。


そして、お姉ちゃんは主役を奪われた日にいった。


「きもちわる」

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