湖
ボチャン!
湖に石を投げた。
ただ、なんとなく近くにあった石を掴んで、投げてみたかっただけだ。
石を投げたところを見ていると、ブクブクブクと大きな気泡が立っている。
なんだろう?
ざばーんと
人間が出てきた。
人間……
え……
な、なんだあいつは
綺麗な女の人だった。
しくしくと泣いている。
「痛い、痛い、痛い」
湖から出てきた女の人は、痛い痛いといっている。
もしかしたら、僕が投げた石が体のどこかに当たったのかもしれない。
みたところ、普通の人間ではなく、もしかしたら物の怪の類いかもしれない。
ばれないうちに立ち去ることにした。
そっと、座っていたところから腰を浮かせかけると。
女は、
「もし、そこのお方」
僕を見て、話しかけているではないか
立ち上がって、答えに窮して、どうするか迷っていると、
さらに問いかけてくる。
「あなたが泉に落としたのはこの石ですか?」
「ここは、泉ではなく湖だろう」
「そんな、些細なことなどどうでもいいのです」
「あんた、湖の女神とかじゃないの!?」
「泉の女神さまです」
「自分に様をつけるな」
帰ろう、
そうしよう
僕は、くるりと後ろを向いた。
「おまちなさい、あなたの落としたのはこの金のかたまりですか?それともビットコインの塊ですか?」
これは、金の斧、銀の斧的なあれかだろうか、って
「おいおい、ビットコインに実体なんてないだろ!」
つっこいみをいれながらまた女神の方を振り向く。
しまった。
そう思っていると、
「あなたですね、この石を投げたのは痛いではないですか」
「いや、違う」
「嘘をつきなさい」
「いや、僕じゃない」
「だまされませんよ」
「人のせいにするんじゃない」
「むー」
女神は険しい顔をしながら、腕組みをし始めた。
「じゃあ、そういうことで」
そう言って立ち去ろうとするところに、
「お願いだからいかないで」
と女神は懇願してきた
また僕はふりむいた
「こんどは、なに」
「お話相手になってください」
「いやじゃ」
「なんと!」
「いやじゃ」
「この金の塊をあげましょう」
「いやじゃ」
「むき~!」
僕はすたすたとその場を立ち去った。
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