鏡
鏡を見ていた。
ユニットバスの中で。
白熱灯一つに照らされた。
換気扇の音。
目の前に写るのは、自分の姿。
いつも見慣れた自分の姿。
目の前の瞳を覗きこむ。
黒い瞳に、さらに顔が映り込んでいた。
その、先の瞳にもきっと同じように顔が映り込んでいるのだろう。
果たして、これは自分なのだろうか
そんな不安が頭をよぎる。
俺は、自分をいきているのだろうか 。
自分てなんなんだろうか
よくわからなかった。
俺はなんで俺なんだろうか。
俺とはなんだ。
自分の顔。
お前はだれだ。
俺はお前だ。
鏡を見ると自分と対話できる気がした。
どうしたらいいのかわからないんだ。
もう、どうしたいかお前はわかっているはずだ。
わからない、なにもわからないんだ。
お前は、現実を見ようとしていないだけだ。立ち向かえ。
どうやって、なにもわからないのに
自分を殺せ、生まれかわれ。
できない、そんなのは嫌だ。
じゃあ、俺がやってやる
鏡に映った自分は手をのばして、俺の首を力強く絞めた。
息ができない。
く、は……あ、
死にたくない、
死にたく……ない、くる……し……い
手が離れた。
ごほ!ごほ!
咳き込む。
息を必死に吸い込んだ。
死にたくないのか?
死にたくない。
俺に、殺された方がらくだったのに
死にたくない。
自分を変えろ、立ち向かえ
はっ、っは、はははは
もう目の前の鏡の自分はいつもの自分に戻っていた。
自分を変えるなんてそんなに簡単なことじゃない
もし、殺されていたなら、
俺は変われたのだろうか。
違う自分になれただろうか
生まれ変われるのだろうか。
もし、死んだら、
違う自分になるのだろうか
死にたくないと思っている自分がいるけれど、
俺が生きていてもどうするのだろう
もしも生まれ変われるのなら
くらだらない、
死んだら終わりだ。
俺は、俺を生きるだけだ。
答えは決まっているのだ。
たまに、こうやって自分と話したくなる時がある。
こうやって向き合いたくなるときがある。
答えは変わらないのに、
話しても変わらないのに
ただ、自分とはなしたかっただけ、
今の自分でほんとにいいのか
確認したかっただけ
生きるのはつらい
死にてぇ
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