第95話 乃亜、キレた!
乃亜の神楽坂へのぶっきらぼうな態度には、乃亜なりの理由があった。
つまり同級生の中でただひとり神楽坂にだけ『素』が出せている、ということだ。
そんな乃亜の告白に対する神楽坂の反応が、こちら。
「本当に雑なのと、実は大事にしてるけどあえて雑に接してるのじゃ、全然違うもん!!!」
プンッ!
頬を膨らませる王子系女子。
その瞬間、彼女の不満がついに爆発したらしい。
「本当は私のことを何でも分かってて、いざと言う時には私を支えてくれる、そういうクッションがあって初めて『雑』に扱って良いと思うんですけど!?」
「お、おぉそうだけど……」
「でも乃亜は私の下の名前も知らないし!自分の買い物には付き合わせるくせに私の買い物には興味なさそうにしてるし!あげく私を置いていって1人でどっか行くし!」
「そ、そうだっけか……?」
「そうだよ!!!」
その剣幕には乃亜だけでなく、隣のテーブルから見守る梶野らも気圧されていた。
「なんかもはや友達を通り越して、恋人同士のケンカみたいになってきたね」
「あっはーー、だね」
「傍から見たらすごい仲良さそうだね」
「南さん……溜まってたんですね……」
結局神楽坂は最後に、混じり気のないまっさらな本音をぶつけてしまうのだった。
「乃亜は私のこと、全然大事にしてない!!!」
このド直球な訴えに、乃亜は数秒ほど呆然としたのち、ヘラヘラと笑いながら応える。
「でもほら、神楽坂っていつもクラスの一部の女子とかに大事に扱われてるじゃん。チヤホヤされてるっていうか。山瀬ちゃんと皆川ちゃんもそうだしさ」
「…………」
ふと、えみりは邪魔にならないよう小さな声で梶野に尋ねる。
「山瀬ちゃんと皆川ちゃんって?」
「たぶんだけど、最近2人と絡むようになったクラスの子だと思う」
「へー、別の友達ができたんだ」
乃亜は軽い口調で続ける。
「そういう態度で接するヤツが多いから、私は距離が近い分、あえて雑にした方がいいっしょ」
「…………」
「良いじゃん、そいつらから大事にされてさ。正直うらやましいわー、あいつら神楽坂が何もしなくてもアンタのこと大好きじゃんか」
「……あの子たちは、友達じゃないもん」
「え?」
神楽坂は、少し声のトーンを落としポツポツ語る。
「いつも遠巻きに私のこと見て……話しても壁を作って、まるで違う世界の人間を見るみたいに……あんなのは友達じゃないもん」
「……まぁ、そっか」
「それで言ったら……私は乃亜の方がうらやましい。乃亜は、ズルいよ……」
「え?」
キョトン、とする乃亜。
ズルいとは何なのか。
「乃亜だったら、普通にすればいくらでも友達できるタイプじゃん、絶対」
「……は?」
「明るいし、物怖じしないし、人懐っこいし……その証拠に山瀬ちゃんと皆川ちゃんともすぐに仲良くなれて……あの2人、私にはまだ壁作ってる感じなのに……」
「…………」
神楽坂は、山瀬ちゃんと皆川ちゃんと自分より仲良く話す乃亜を見て、疎外感を感じてしまっていた。
そして、わずかな嫉妬心も。
「乃亜こそ、普通にしてれば誰からも愛されるから、友達なんて簡単にできるのに……ズルいよ」
ついには自分の心の醜い部分まで曝け出した神楽坂。
しかしその直後、不安を覚えたのは、梶野だ。
「……これ、ヤバいかも」
「え、何がヤバいの了くん?」
「乃亜ちゃん……絶対言われたくないこと、言われたかも……」
梶野の不安は、残念ながら的中してしまった。
ゆらり、乃亜が首を傾ける。
「……なんだァ?てめェ……」
乃亜、キレた!
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