第5話 黒の竜と森の守護者
恐ろしい存在になった黒のドラゴンに対抗するため、森の生き物は月に祈った。
その祈りは、天界に届いた。天界は、森に月の光を一晩中送り続けた。
おかげで、その時、僕たちの世界は原因不明の皆既月食として報告された。
一晩中月の光を受け続けた森は、樹木が半分回復して、森の生き物が何とか生きていける状態になった。
そして、今まで森には、いなかった動物が生まれた。
それが、トラのグルンであり、ライオンのキズミ。九尾のキツネであるクーマだ。
命名が、七白さんなので、やたら可愛らしい名前がついているが、もう一体、オオカミのベクターと共に、黒のドラゴンに対抗するために森が、樹の再生を半分に抑えて生み出した存在だ。
一晩で再生した森に、再び黒のドラゴンが、襲いかかってくると、ライオンのキズミが、たてがみで強風を起こし、風に乗って空を駆け上った九尾のキツネのクーマがドラゴンに乗ると、空に向かって雷を呼び、黒のドラゴンに直撃させた。
ボロボロになった、黒のドラゴンが、吐き出そうとした炎をオオカミのベクターの遠吠えが、かき消した。
森に落下した、黒のドラゴンの翼をトラのグルンが爪で引き裂いた。
ベクターが、再び遠吠えをして、引き裂いた翼を粉々にして、吹き飛ばした。
キズミが作った大気の渦がドラゴンの巨体を浮き上がらせた。クーマの雷撃が再び翼を失ったドラゴンに直撃した。
さらに、追撃をする3体の攻撃全てが、グルンの爪に吸い込まれ、月と同じ黄金色に光り出した。
吹き飛ばされた飛べない黒のドラゴンの身体を光る爪が引き裂いた。
月の光を放つグルンの爪は、攻撃を受けた物の存在を否定する能力がある。
黒のドラゴンは、引き裂かれた部分から、ゆっくりと身体が無くなっていった。
黒の森は、かつての様に、樹々がうっそうとしているとは、言えなくってしまったが、トラやライオン。キツネやオオカミといった新しい仲間を迎えて、昔以上に楽しい森になった。
「黒のドラゴンに襲われる前は、月の光に浮かび上がる森は、そこだけ闇を集めているのかと思うくらい黒かったの。だから、黒の森と名付けたの」
「あれ?七白さんが名付けたの?」
「なかなか良い名前でしょう」
たしか彼らの名前も七白さんが、考えたと言っていたが、美しい外見に反して、名付けのセンスは、無いようだ。
「ところで、先程からオオカミのベクターの話しが出てますが、彼は今何所に?」
「ベクターなら、今、岩山でドラゴンの長と会談しているよ。この先、あんな事がないように、定期的に話し合う時間を持つようにしてます。でも今回は、特別。ドラゴンの方から呼ばれたと聞いたけど」
キズミ君によると、ドラゴンたちの越える力を持つベクターへの信頼度は高く、何かあると呼びに来るそうだ。
音が鳴った。また、あの音だ。確かに聞き覚えがある。
そうだたしかあれは僕の…。
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