6、

わたしはぶつけられる熱い想いに、心臓の音で耳が聞こえなくなると思えた。これは、愛の告白ではないか。


初めてだった。

好かれ、求められるのはいつも姉だった。

わたしなど好きになってくれる人など、一生誰もいないと思っていたのだ。


そんな、予想もつかない展開にわたしはパニックになった。

だから、やれることはただひとつしかないではないか。


走ること。

走って走ってこの場から、彼から逃げること。


そして、走って逃げて、鞄の中に置き忘れてしまっていた自分への初めてのラブレターを読む?

さくらの封筒。

今ならわかる。

山吹さくらはわたしの名前。

わたし宛てのラブレターだったからだ。


学校から校門をでて、一気に駅まで走る。

クラブ活動を終えた後にもう一走りは辛かった。

だけど、勉強ばかりの彼には追い付けないはずである。

以前追い付けなかったと言っていたではないか。


駅の改札で、わたしは限界だった。



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