4、

「いいわよ。手紙?プレゼント?なんでも受け取ってあげるわ」


そういうと、彼はびっくりする。

眼鏡の奥から、わたしが居心地悪くなるほど、わたしを見た。

彼は驚きながらも、胸ポケットから取り出した小さな封筒を、わたしは奪うようにして預かった。

それは皺が寄っていたが、ピンクのさくらの散らばる綺麗な封筒だった。

さくらは、わたしの名前である。

姉への手紙にさくらの封筒を選ぶところは、頭がいい男だろうに、なんだか残念な気がした。


「名前はちゃんと書いてあるのでしょうね?」

「書いている。読んでくれたらイエスでもノーでも、必ず返事が欲しいんだ」

わたしは、なんだか姉に渡すことを信用されてないような気がして、こころなしかむっとする。

「手紙を読んで、返事をするかどうかなんてわからないから約束できない。だから、返事は直接聞いて?」


わたしは言う。

何か言いたそうに開く口。

だが、わたしはもう十分足止めされてしまった。

陸上部の練習が始まる時間だった。


4日もたったころ、彼はまた同じところで会う。

今度は練習を終えた時間だった。

あきらかにわたしを待ち伏せしていたのだった。


彼の存在を全く忘れていたことが不思議なほどだった。

それと同時に、先日頼まれごとをしていたことを思い出した。


「返事をもらいにきたんだ。付き合ってもらえるのかどうなのか。僕の気持ちを伝えた手紙を読んでくれているのならば、、、」


意を決したように彼は言う。

期待を込めた目で見られてしまう。

冷たく心臓が打ち始めた。


わたしは青くなった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る