3、

それはラブレターだったり、バレンタインの逆チョコだったり、誕生日の小さなプレゼントだったり。

中学から高校の間、何回それを繰り返したのだろう。

姉に伝言を頼む彼らは、わたしが同じ誕生日だということを思いもしないのだ。

せめて、一日でも違っていれば、こんなにみじめな思いをすることもなかったのだと思う。


わたしはなんて運の悪いヤツなんだと思わずにはいられない。



姉は日傘をさし続ける。

わたしは、高校に入ると陸上部にスカウトされる。




そいつはある日、クラブ活動に行く途中、分厚い黒縁メガネでわたしの前に現れた。

ひとめでわかる、難関大学を受験しても合格するのが確実なヤツだった。


つまり、学年1、2を争う優秀な男子である。

眼鏡の奥は凛とした強さを感じる、ひとつ上の学年の男子である。


わたしには縁のないタイプ。

今までも。

これからも。


「やあ、、」

声を掛けてきた途端、姉に用があるのがわかった。

なぜなら、わたしには彼には用がないからだ。


だから、ずいっと手を差し出した。


こういう相手が赤面して、さも大事なものを突き出すようにして、姉に渡して欲しいと頼まれる毎度繰り返される借り受け儀式を、最近ではすっとばすことを覚えたのだ。






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