三話君が悪いんだ当然だろ?
なんだ....思ったより優秀だったのか
僕がノエルから聞いて思った感想だ
今回僕等が受けようとしている護衛依頼は
とある商人の護衛だ
期間は大体二週間で内容はこの街イニムからフェンリルの森とは真逆の東側を進んだ場所にある都市プロテアの道中に襲って来るであろう山賊や魔物から護衛する事らしい
報酬は一人につき金貨5枚
他の雑用依頼で1日やって銅貨50枚程だが
この護衛依頼だと平均しても1日あたり銀貨3枚と銅貨50枚程貰える
おかしいな2つランクが違うだけでこんなに報酬額が変わるとかもはや差別だよ
何か理由があるのかとノエルに聞くと
「この依頼はシルバーからしか受けれないって条件がありますよね?
これがシルバーが中堅って言われる理由なんです!」
とノエルが得意げに話してくれた
それは興味深い内容だった
まずランクには昇格試験があってこれをクリアすると昇格になり一つ上のランクの依頼を受けれるようになる
詳細は省くがシルバーに昇格すると出来る事が多くなり、冒険者としては余裕のある生活が出来るらしいが、その反面上がるには様々な面での能力が必要らしく戦闘などの実力があってもシルバーに上がらない者も結構居るそうだ
実力だけでなく内面でも判断された者がシルバーに上がれる為、その分冒険者の質が高くなり、依頼する人の質も上がるという仕組みだ
「シルバーには推薦みたいな物もあって一人までならシルバーの依頼にシルバー以下の人をパーティーに入れても大丈夫なんです!」
シルバーから結構な好待遇だな
ノエルはちゃんと優秀だった
「ノエル、優秀だったんだね」
「!?そうです!だから私と組めて良かったでしょ!?運が良かったですねエストさん」
すぐに調子乗るなぁノエル
「優秀だけどあんな犬には負けるのか...」
「んなっ!何で前の事掘り起こすんですか!
...あれは怪我をしていたんです。
あ、あとソロだったし...」
「.....まぁ僕はノエルが優秀な冒険者だと思うよ」
「きゅ、急に褒めるなんてどうしたんですか」
「いやいや?ノエルはシルバーランクの冒険者だしね?出会えた僕は幸運だなぁってね」
「そ、そうですか。幸運....そうですよね
えへ、えへへへ」
僕はノエルがちょろ過ぎて心配だよ
「優秀だけど犬に勝てない冒険者...」
「!?エストさん?それ悪意がありません?
た、確かに負けましたけど...」
「犬に負けた優秀な冒険者(笑)」
「!?褒めてるのか馬鹿にしてるのかハッキリして下さい!」
褒めてるんだよ
翌日
事前に準備した物をバックに入れて早朝から宿を後にする
所持金は銀貨2枚と銅貨27枚
昨日はとある臨時収入が入り懐は余裕がある
プロテアに着いたら何か買い漁ろうかな
「あ、エストさん!おはようございます」
「おはようノエル。今日はよろしくね」
街の東門には多くの冒険者が集まっていた
皆、商人が雇った護衛らしい
しばらくして依頼主らしき男馬車から降りて喋り始めた
「冒険者諸君。この度は我が商隊の護衛依頼に参加いただき感謝する。
まぁ何度も参加しているものも居るだろうがいつも通りだ!初参加の者も特に問題を起こさなければ報酬は払う。
ではまたプロテアで会おう!」
そう言って馬車の中へ入っていった
「エストさんエストさん私達はこっちの馬車に乗るんですよ」
「へぇ、乗せてもらえるんだ。てっきり歩かされると思ったんだけど」
「護衛を歩かせるなんて馬鹿な事する依頼人は貧乏人ですからね今回の商人は街の中でも上の人ですから」
護衛を歩かせて無駄な体力を消費させて、負けてしまって元も子もないですからねと
ノエルが得意げに説明していた
僕達も馬車に乗り込み、商隊が都市プロテアに向かって動き始めた
「...本当にやる事がないんだね」
「まぁ、魔法職でもなければ冒険者は護衛以外は役に立たないですからね。行きは魔物に遭遇する事が多いですけどそれでも一回か二回ほどです」
出発から一日経ち二日目を迎えたが昨日と変わらず馬車の中で揺られながらただ待つだけという楽な依頼だ
僕たちが配置された場所は全体の中で中間の荷車で最前列と最後尾よりも比較的魔物が来ないらしい
同乗者はノエルだけで他にやる事もなく
僕はすでに退屈していた
ノエルは何が楽しいのか今日は僕の装備をみて不思議そうな顔をしていた
「エストさんって魔法使えましたよね?ほら私を助けてくれた時のアレ」
「バインドね。あれは無属性の魔法だからね魔力さえ有れば誰でも使えるよ」
無属性魔法
この世界には多様な魔法があるが最も古く親しまれているのがこの無属性の魔法だ
魔力さえあれば誰でも使えるようになる
基本的な魔法だ
「エストさんが強いのはもう分かってますけど...本当によくこの装備でフェンリルの森に行きましたね...お陰で私が助けて貰った訳なんですが」
「この装備じゃちょっと無謀かな?」
「無謀以前に自殺だと思いますよ」
そこまで酷いと僕が馬鹿みたいじゃないか
僕は別に死ぬ為に森に入った訳では無いんだけど
まだ知り合ってそんなに時間は経っていないけどノエルに僕は色々な知識を教えてもらえたし、事実なのだろう
実際、かなり危なかったし
「にしてもこんな割の良い依頼あったんだね。僕もシルバーに早く上がらなきゃなだな」
「エストさんは常識知らないだけで強さと教養はあるから平気ですよ!私がすぐブロンズにしてあげます!」
「偶にだけど君も結構鋭い毒吐くよね」
そりゃ自殺行為みたいな事したらしいし、実際あまりに冒険者の知識無かったからその通りなんだけどさ
そんな話をしている内に今日もまた何事もなく過ぎていった
$$$
イニムの冒険者ギルド
とあるルーキーのパーティーが報酬を受け取っていた
「はい!街の清掃依頼。無事達成です!報酬として一人銅貨65枚です。街の清掃、お疲れ様でした!」
「ありがとうございますシエラさん。次も何か良い依頼があったらお願いします」
四人の幼馴染パーティーのリーダーであるアレスはそう言って報酬を受け取り仲間が居るギルドのテーブルに戻った
「....また雑務依頼受けるの?私そろそろ他の討伐依頼とか受けてみたいのに」
「私もアリアと同意見だ。同じ雑用ばかりで成長する気がしないな」
まだ数日しかたっていないのにリザとアリアは退屈したらしくリーダーであるアレスに文句を言う
「リザ、アリア。二人の意見も分かるけど、講習の先輩冒険者の人達も言っていただろう?最初の内は雑用依頼をこなしながら体力と知識をつけてから討伐依頼だって」
先輩冒険者が言うにはフェンリルの森は予想外な事が起こりやすく討伐目標が弱くてもふとした事でパーティーが壊滅してしまう事があるらしい
その為、ルーキーの内は経験として実戦ではなく街で学ぶのが一番良いと言っていた
アレスは先達の言う事を理解していた為、あまり乗り気では無かった
「でも私達そこら辺のルーキーの人達より強いと思うよ?一番低い討伐依頼ぐらいなら楽勝だって」
「今やってる依頼では一人銀貨一枚も稼げないが討伐依頼なら楽に超えるぞ?」
食い下がる二人にアレスは折れたのかもう一人の少女に声を掛ける
「クロエ、僕達は討伐依頼を受けても大丈夫かな?」
クロエはアレスの方を見ずにギルドの椅子に座りながら眠そうな声で答えた
「...んー私は別に平気だけどさ、三人とももう少し強くならないと一番低い討伐依頼でも厳しいんじゃない?」
「えぇ?酷いよクロエ〜この二人は兎も角私も無理だなんて」
「まぁ、クロエが言うなら仕方がないか」
先程まで食い下がっていた二人もあっさり諦めた
「二人ともアレスの言う事は聞かなきゃ駄目だよ?」
「まぁ正直な所、未だになんで僕がリーダーなのか僕を含めて君以外納得してないんだけどね」
ルーキーの中で有望株のパーティーは着実にその実力を伸ばしていた
$$$
「ここが商業都市プロテアです!」
結局何事も無く都市プロテアに着いてしまった僕とノエル
一週間後また護衛に入る為、ギルドに申請を出した後、僕が折角初めて来たので観光する事になった
「プロテアは商業が盛んで商人が色々な品を仕入れてくるので希少なものでも手に入りやすい利点があるのです。基本的にギルドでの依頼は護衛などが多いイメージですね。討伐依頼は殆どないです」
「イニムより魔物が少ないってこと?」
「それもあるんですが、魔物より山賊とか人による被害が多いですよね。ここ」
プロテアは貧富の差が酷くそれによって犯罪者の数も増えているのだとか
スラム街と呼ばれる区域は特に酷いらしいので間違えても一人で行かないで下さいと注意された
「と、まあ今日はこんな感じで充分だと思います。取り敢えず泊まる場所に行きましょう!」
ノエルのおすすめで中堅冒険者御用達の宿を取った
一泊銀貨5枚と言われた
何かの冗談だと思ったが治安が格段に良いし何より風呂と飯があると聞いて安心した
「じゃあ一部屋で」
「...え?エストさ」
ここでノエルに喋らせると面倒な事になりそうなので口を片手で塞ぐ
「まぁまぁ...ちょっと話し合いが必要だと思うんだ。僕」
後で文句は聞いてあげるから
「な、何で一部屋だけにしたんですか!ま、まさか。私の事襲うつもりなんでしょ!エストさん!」
顔を真っ赤にしながらだいぶ見当違いな事を叫んでいるノエル
自惚れてんじゃねーよ
「ノエル...悪いけど僕、一泊銀貨5枚とか無理なんだよ。ルーキーが払える値段じゃないだろ一泊で銀貨5枚とか」
僕の今の全財産で銀貨2枚程度だぞ
ノエルにルーキーの悲しき懐事情を説明すると何とか落ち着いた
「そうだったんですね。そういえば私、エストさんのランクすっかり忘れてました。そういう事なら私が悪かったです」
「そうだよ。反省しろ」
「うっ、わ、悪かったですよ!代わりにこの一週間の部屋の料金、私が払うからそれで許して下さい!」
さっきまであんなにドヤ顔で観光案内していたのに今じゃ涙目のノエル
少しは溜飲も下がった
「ま、取り敢えず疲れたし今日はもう寝ようか」
「え?も、もしかして一緒に寝るんですか?」
「?いや....ベットは一つしかないんだから分かるよね?」
「...へ、変態!エストさん最低です!」
顔を真っ赤にしながら僕を罵倒するノエルに僕はそっと毛布を渡した
??と不思議そう首を傾げて僕の方を見るノエルに現実を教えてあげた
「どう考えてもあのベッドは二人で寝るには狭すぎるよ。僕がベッドで寝て、ノエルは床で寝るんだ。分かった?」
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