第12話 誰、この美少女?

 1人で行動する時、全ステータス+50って化け物じゃないか! 強過ぎだろ!!

 これなら、どんな相手とも戦っていけるかも!

 

 ガサッ!


 隣の茂みが、音を立てる。

 そうだ。俺は今、森にいるんだ。

 気を抜いてはいけない。

 とりあえず、ポイントを割り振るか。


「ちからにポイント60、すばやさにポイント40」


 ヤマナカユウト

 職業 平民

 レベル 40

 HP 90

 MP 30

 ちから 163

 かしこさ 13

 みのまもり 13

 すばやさ 153

 かっこよさ 13


 スキル E 底力 レベル3(体力が30以下の時に攻撃力+30)

     D 逆境 レベル4(相手の方が能力値が高い場合、全ステータス+15)

     A ど根性 (HPが2以上の時、1日に1度だけ致死量のダメージを受けてもHPが1残る)

     S 死してのちむ (HPが1の時、ちからとすばやさのステータスが倍になる)

     S 孤高 レベル1(1人で行動する時、

全ステータス+50)


 レベルアップ『ポイント30』


 あれ? ポイントがまだ残ってる?

 そういえばオーガを倒して上がったレベルは13だったよな。だが、ポイントの上限は100だった。

 ということは、追加のポイント30が反映されたってことか!

 なんだか得した気分だな。

 

「ちからにポイント10、すばやさにポイント20」


 これでよし。

 これから強敵を倒した後は、ポイント配分にも気をつけないとな。


 それにしても、新しく獲得したSランクのスキル、孤高、これすっごく強いな。しかも1人で行動する時に発動と比較的に優しい条件だ。


 だが、俺には桜がいるしなぁ。きっと、今も俺のために必死で勉強しているのだろう。

 桜がこのスキルの存在を知ったら、また自分は足手まといだとか言いそうだな・・・

 うん、やっぱりこのスキルのことは隠しておこう。

 

 俺はお金とオーガの角を回収して森を出た。


 宿屋に着くと、俺は早速、大量のお金を机の上に広げた。ワクワクしながら桜の反応を待つ。

 だが、桜の反応は俺が想像していた反応ではなかった。俺はあのSランクのスキルを使ったのではないかと疑われ、その後小一時間ほど桜に説教を受けることになったのだ。


・・・・・・  

    

 次の日も、俺は桜と分かれて森へ向かった。

 宿屋を出る前に、また10分ほど、桜に説教を受けたが・・・


 俺は、オーガ単体なら瀕死になることもなく倒せるようになっていた。

 まあ、当たり前か。あの時と比べてレベルも一気に上がったし、スキル孤高があるんだもんな。

 ここらへんのモンスターじゃ相手にならない。


 今日はオーガを2体と熊を3匹、オオカミを5匹倒して森を出た。

 この調子なら新たな街に行けそうだ!

 俺は希望を胸に宿屋へと向かった。

 

 今日は説教ないよな。

 扉に手をかけた時、昨日の桜を思い出す。

 あれは長かったなぁー。だが、今日は2体のオーガを倒したんだ。あのスキルを使ったとは思わないだろう。

 俺は、意気揚々と扉を開けた。


「おかえりなさい!」


 あれ? 俺、部屋を間違えたかな?

 扉を静かに閉める。


「えっ、どうしたんですか?」


 おかしい・・・

 俺はもう1度、扉を開けた。


「どうして扉を閉めたんですか!」


 見知らぬ謎の美少女が、頬を膨らませる。

 この感じ、桜だよな?

 だが、見た目があからさまに違っていた。


 くりっとした目に長いまつ毛、唇は小さいながらもふっくらしている。セミロングのサラサラとした黒い髪は綺麗に整えられていて、いい匂いがした。


 誰、この美少女?

 

「今日はあのスキルを使いませんでしたか?」

 

 やっぱり桜だ。

 そんなことを言うのは1人しかいない。

 だが、いくらなんでも変わりすぎじゃないか??


「桜か?」

「はい。桜です」


 いまだに信じられない。

 そういえばお姉さんはモデルをしてたって言っていたっけ?


「髪型とか変えたのか?」


 桜の頬が赤く染まる。


「気づいてくれたんですね」


 いや、誰でも気づくわ!! 

 別人の域だよ!!!

 

「今日も勉強をするために図書館へ向かっていたんですよ。そしたら、カットモデルになってくれないかと頼まれまして。勉強の時も髪の毛が邪魔だったので受けることにしたんです」


 桜の笑顔が輝く。

 美容師さんありがとう!!

 最高だよ!!!

 

 ただ、1つだけ言いたいことがある。

 いくらなんでも可愛くし過ぎだろ!

 これは相当深刻な問題だぞ!!


 俺が黙って横を向いていると、


「どうしたんですか?」


 と、桜が上目遣いで俺を見てきた。

 俺はついに桜に背を向けてしまった。


 そう、皆さん承知の通り、俺には女子に対する免疫が全くないのだ。

 今まで、女子と話したことといえば、

「こちら温めますか?」

「大丈夫です」

 これぐらいだ。

 朱音とも直接話してはいない。海斗がうまく話を繋げてくれていたからな。

 こんなことを言うのは失礼だが、今までの桜の見た目は陰キャそのものだった。シンパシーを感じていたぐらいである。

 それが急に美少女になるだと??

 俺は一体どうすればいいんだ???


「やっぱり、私にはこんな髪型似合いませんよね」


 視線を落としため息を吐く桜。


 いや、違うんだ。女子に耐性のない俺が悪いんだ。ここはなんとか桜を褒めないと。

 俺は振り向き、だが、目は合わせずに、恥ずかしさと闘いながら、なんとか言葉を絞り出した。


「いや、いいと思うよ」


 なんでもっと気の利いた言葉が言えないんだ俺! 「似合ってるよ!」とか「かわいいよ」とかあるだろ!!


「そ、そうですか。ふふっ!

 そうだ! 夕ご飯にしましょう。

 もう準備はできてるので」


 桜はそそくさと台所に向かった。

 はぁ、俺、不甲斐なさすぎる。


 その日、俺が桜の顔を直視することはなかった。


・・・・・・


「悠斗くん、起きてください!」


 俺は重たいまぶたを持ち上げる。

 すると、目の前には天使がいた。

 うわっ! 眩しい! 

 

 ・・・冗談は置いといて、桜は俺を起こした後、急に高らかと宣言した。


「今日はダンジョンに行きましょう!」


 ダンジョンだと!

 胸の鼓動が一気に高まる。


「ダンジョンを攻略すれば、特別なスキルが手に入るらしいですよ。

 ハズレスキルの場合も有るらしいのですが、レベルアップにも最適な場所らしいです!」


 意気揚々と答える桜。

 すごくやる気に満ち溢れている。


「そ、そうだな。今日はダンジョン攻略だ!」


 口ごもりながら答える俺。

 未だに桜の顔をしっかり見れない。

 はぁ、早く女子への免疫を上げなければ・・・


「はい! もう準備はできています。

 後は向かうだけです!!」


 桜は腰につけているポーチを、ポンポンと叩く。


 すごいな! 

 俺が準備を終わらせれば、すぐダンジョンに行けるのか。ダンジョンのことは何も知らないから、桜に任せるとするか。



 俺はこの判断を後々後悔することになるのだが、今の俺にそれを知る術は全くなかった。

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