第11話 これ、強すぎないか?

 おかしい! なんでこんなに強いスキルを使っちゃ駄目なんだ?? 自慢じゃないが、これがないと俺は誰にも勝てないぞ。


「なんでだよ?」

「だってこのスキル、HPが1の時じゃないと発動しないじゃないですか。一発でもダメージをくらえば死んでしまうんですよ!

 私、そんな悠斗くんを見てられません。

 悠斗くんが死んじゃったら私、どうすればいいんですか?」

「いや、でもスピードも上がるから相手の攻撃も全部かわせるんだぞ? やられることなんてないよ」

「駄目です!!!

 トラップでも仕掛けられたらどうするんですか?1ダメージでもくらってしまえば死んでしまうんですよ!!」


 本当だ! それは考えてなかった。今思い浮かべてみたけどゾッとするな。まきびし踏んで死ぬ俺。異世界での死に方がしょうもないのは絶対に嫌だ!ただでさえ、元の世界で変な死に方してるのに。

 でもこのスキルを使わないと俺は・・・

 

 桜を見る。

 桜もこれだけは譲る気がないようだ。

 小さい頬を精一杯膨らませている。


「はぁ、分かったよ。できるだけ使わないようにする」


 俺は渋々だが了解した。

 先程まで険しかった桜の顔が笑顔になる。


「よかったぁ」

「それじゃあ稼ぎに行くか」

「はい!」



・・・・・・



「あまりお金がたまらないな」

「そうですね」


 俺が海斗をぶん殴ってから3日が過ぎていた。


ヤマナカユウト

 職業 平民

 レベル 27

 HP 75

 MP 20

 ちから 73

 かしこさ 13

 みのまもり 13

 すばやさ 73

 かっこよさ 13


 スキル E 底力 レベル1(体力が10以下の時に攻撃力+10)

     D 逆境 レベル2(相手の方が能力値が高い場合、全ステータス+7)

     A ど根性 (HPが2以上の時、1日に1度だけ致死量のダメージを受けてもHPが1残る)

     S 死してのちむ (HPが1の時、ちからとすばやさのステータスが倍になる)」


 レベルアップ『ポイント70』


 3日間、カラスやオオカミを狩り続けレベルは上がっていたが食費や宿代、武器の補充などで1日1日を生きるのが精一杯だった。

 この調子ではこの都市を出ることはできないだろう。

 言い知れぬ停滞感が俺を包んでいく。


「悠斗くん」


 急に桜が神妙な面持ちで俺を呼んだ。


「どうした?」

「私、少し勉強してきます」


 えっ、勉強? どういうこと?


「悠斗くんのスキルってこの世界に来てから獲得したんですよね? だから、私も何か役に立つスキルを獲得したいなと思って」


 確かに俺のスキルはこの世界に来てから獲得したが、スキルってそんな簡単に獲得できるのか? 

 俺は結構苦戦したイメージがあるけど・・・


「あと、今の私が悠斗くんと一緒に森に行っても足手まといですし」


 消え入りそうな声で言う桜。

 少し負い目を感じているのか?

 気にすることなんてないのに。


 でも桜がやる気を出しているんだ。

 ここは応援するべきだよな!


「分かった! しっかり勉強してこい!!」

「はい!」


 異世界に来てまで勉強か。

 俺は絶対に嫌だな。


「それでは行ってきます!」

「おう!」


 桜は元気よく部屋を出ていった。

 自分のすることが明確になったからか、桜の足取りは今までで1番軽いように見えた。

 

 俺も前に進まなければ。


ヤマナカユウト

 職業 平民

 レベル 27

 HP 75

 MP 20

 ちから 103

 かしこさ 13

 みのまもり 13

 すばやさ 113

 かっこよさ 13


 スキル E 底力 レベル1(体力が10以下の時に攻撃力+10)

     D 逆境 レベル2(相手の方が能力値が高い場合、全ステータス+7)

     A ど根性 (HPが2以上の時、1日に1度だけ致死量のダメージを受けてもHPが1残る)

     S 死してのちむ (HPが1の時、ちからとすばやさのステータスが倍になる)」


 うん、これでいいだろ。

 

 俺は桜が部屋を出ていった後に、溜まっていたポイントを割り振った。


 桜から回復薬もいっぱい貰ったし、準備万端だ!


 俺も威勢よく宿屋を出た。

 

・・・・・・


 よし! 熊も余裕で倒せるようになってきたな。

 もう少し森の奥に進んでみるか。


 俺が大量のお金を持って帰ってきた時の、桜の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

 なんだかやる気が出てきたぜ!

 

 俺は森の奥へと足を踏み入れた。




 森には木々のざわめく音だけが響いていた。

 まるで俺が奥に進むのを歓迎しないかのように。


・・・・・・

 

 おかしい。モンスターが出てこない。

 今までならば、これほど歩けば5体ぐらいのモンスターには出会っていた。それなのに、今は小鳥がさえずる音さえ聞こえない。



 しかし、静寂を破るそれは、突然、俺の目の前に現れた。


 2メートルは超えているでだろう身長に、丸太のような太い腕。口は耳元まで裂けていて、鋭い牙が顔を覗かせている。頭には牛の角に似たものが2本生えており、右手には大きな棍棒を持っていた。

 肌は赤褐色に近い色をしていて、俺を見る目は、敵意に満ち溢れていた。


 そう、一言で表すならばオーガだ。

 今まで、漫画やアニメでよく見たオーガに近いモンスターが俺の目の前に急に立ちはだかった。


 俺は畏怖の念を抱くとともに心の中で叫んだ。


 すっげぇーーー!! さすが異世界!!!

 こいつが海斗が言っていたオーガか!

 一目見てみたいと思ってたんだよな!!

 

 オーガは俺の考えを遮るかのように、右手に持っていた棍棒を振り下ろした。

 

 間一髪、俺は棍棒をかわす。

 

 上等だ! やってやるぜ!!

 これでこそ異世界だ!!!

 

 俺はオーガの腹を持っていた剣で斬った。

 手応えは充分!


 しかしあまり効いていないのか、オーガに反応はなかった。


 それならば、手数で勝負だ!

 

 俺はオーガの攻撃をかわしながら、大量の斬撃を浴びせた。


 オーガの攻撃は単調だった。俺に狙いを定めて棍棒を振る。それをひたすら繰り返すだけだった。

 注意することといえば棍棒が上から振り下ろされるか、横になぎ払われるかだけなので、かわすのは容易かった。


 今までやってきたゲームと比べればヌルゲーだぜ! これで終わりだ!!

 

 俺は少し距離をとり、オーガの首元めがけて突っ込んだ。

 だが、うまくいかないのが世の常である。

 オーガは何を思ったのか、右足を地面に踏みつけたのだ。地面に衝撃波がはしる。

 

 あれ? 


 俺の体がオーガの目の前で宙に浮く。

 その瞬間、オーガの棍棒が俺の頭に向かって振り下ろされた。

 俺は見事に地面に叩きつけられた。


「がはっ!」


 なんだよ! 今の攻撃パターンは!?

 今まで1回もしてこなかったぞ!


 もしかして、HPが一定まで下がると発動する攻撃パターンなのか?


 しまった! 俺としたことが。

 調子に乗っていた。


 俺のHPが一気に減っていき、1を表示する。

 はぁ、桜との約束を破ってしまったな・・・


 俺は立ち上がった。

 オーガは少しの戸惑いも見せずに棍棒を振り回す。もちろん、その棍棒は当たるはずもなく、俺の斬撃がオーガを圧倒する。


 オーガが、右足を上げる。


 きた!


 俺はすぐさま空高くジャンプした。

 オーガは右足を上げているので、頭上の俺に対応できていなかった。


「これで終わりだ!!」


 俺の剣がオーガを真っ二つに斬った。

 オーガは膝をついて倒れる。

 そして、お金と角がその場に生まれた。


 ふぅ。なんとか乗り切ったぜ。

 今回も結構やばかった。実際には一回死んでるんだもんな、俺。

 やっぱり、このSランクスキルのおかげだよ。

 

 ブンッ!


 ヤマナカユウト

 職業 平民

 レベル 40

 HP 90

 MP 30

 ちから 103

 かしこさ 13

 みのまもり 13

 すばやさ 113

 かっこよさ 13


 スキル E 底力 レベル2(体力が20以下の時に攻撃力+20)

     D 逆境 レベル3(相手の方が能力値が高い場合、全ステータス+10)

     A ど根性 (HPが2以上の時、1日に1度だけ致死量のダメージを受けてもHPが1残る)

     S 死してのちむ (HPが1の時、ちからとすばやさのステータスが倍になる)

     S 孤高 レベル1(1人で行動する時、

全ステータス+50)


 レベルアップ『ポイント100』

(ポイントが上限に達しました。今すぐポイントを割り振ってください)


 おっ、ポイントが上限に達したか。

 なになに、HPは90でMPは30。

 スキルのレベルも上がってる。

 いいぞ、順調だ!


 ん? 待てよ。なんだこのスキル?

 

 孤高?? 


 これ、強すぎないか?

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