第2話 なんだか泣きそうになってきた

 しかも「スキルなし」??

 どういうことだ???

 ちから、かしこさ、みのまもり、すばやさ、かっこよさ全て1だし。

 

 ってかっこよさは余計なお世話だ!! 

 これって何かの間違いだよな?


 ステータスを閉じてもう一度開く。しかし、ステータスの内容は何も変わっていなかった。


 異世界に来たはいいけど早速詰んだ。

 お先真っ暗なんですけど。


 ていうか、平民ってなんだよ!

 全員勇者じゃなかったのか???

 

 ぶつけようのない怒りが込み上げてくる。

 だが、俺にできることは何も無かった。

 だって、平民なのだから・・・


「おおーい! 悠斗ーー!!」


 突然、聞き覚えのある声が目の前から響く。


 この声は! 海斗だ!!

 もうお前が神だよ。本当に。


「悠斗、良かった。一緒の都市だったな!

 ステータスどうだった?」


 少し息を荒げながらも、嬉しそうな海斗。

 そんな顔されたら、照れるだろ!


「まあ、ぼちぼちかな」


 こういう時って見栄を張っちゃうよね。


「そうか、俺は結構良かったよ」


 そう言って海斗はステータスを見せてくれた。


アカツキカイト

 職業 勇者

 レベル1

 HP47

 MP28

 ちから 21

 かしこさ 35

 みのまもり 20

 すばやさ 32

 かっこよさ 50


 スキル S 水神 レベル1(水を自由自在に操る)


 おいっ! ちょっと待て!!

 俺とえらい違いじゃないか!!!

 ステータスは圧倒的だし、スキルもSランク、最高じゃないか。何よりかっこよさ50ってどういうことだよ⁉︎  俺なんか1だぞ。


「う、うわぁー。 結構すごいね」

「運が良かったよ。ついでに所持金で木刀を2本買ったんだけど1本使う?」

 

 所持金ってどういうことだ? 俺なんか一文無しだったぞ。

 しかし、ここで木刀を2本買っているあたり、さすがイケメンだ。ありがたく貰っておこう。


「ああ、ありがとう」

「向こうにある森にモンスターが出るらしい。そこで一狩り行こうぜ!」

「うん」


 海斗って完璧な奴だな。なんだか自分が惨めになってきた。



・・・・・・



「おらっ!」

「どう? スライム倒せそう」

「もうちょっとでいけそう。くらえ!

 よし、倒せた。そっちは」

「うん、3体ぐらい倒した」


 はぁ、俺、足手まといだな。

 

 俺たちは森に来て、スライムを倒していた。海斗はワンパンでスライムを倒していくのに対し、俺は4、5発殴らなければ倒せないという悲しい事実。

 なんだか泣きそうになってきた。


 しかし、俺はまだ異世界での活躍を諦めていない! なぜかって? 

 このパターンは途中で最強スキルが手に入る流れだろ? そしてチヤホヤされるんだ!!


「ガッツポーズなんかしてどうした?」


 あっ、海斗がいるの忘れてた。

 俺は「なんでもないよ」と答えてスライム討伐に勤しんだ。




 ふぅ、そろそろレベルが上がったかな?

 少し見てみるか。


「ステータス!」


ヤマナカユウト

 職業 平民

 レベル 4

 HP 16

 MP 6

 ちから 1

 かしこさ 1

 みのまもり 1

 すばやさ 1

 かっこよさ 1


 スキル なし


 レベルアップ『ポイント30』


 レベルが上がってる! しかも3も!!

 だが、ステータスがHPとMP以外1つも上がっていないな。ポイント30と書かれてあるから、俺が振り分ける仕様になっているのかもしれない。

 試しにやってみるか。


「ちからにポイント10」


 するとステータスに変化が起きた。ちからが11になったのだ。

 すごい! こうやって強くなっていくのか。


「どうした、悠斗?」

「レベルが上がってポイントを割り振ってたんだ」

「レベルが上がったのか⁉︎  ステータス。

 うーん、俺は上がってないな。ちなみにどれくらい上がったんだ?」

「3かな」

「3も! すごいな」


 いやお前の方がすごいから。

 俺のステータスを見たら幻滅するぞ!

 海斗には絶対ステータスを見せないようにしよう。


 しかし残りのポイントはどうしようか。今すぐ全てを使う必要はないか。


「ちから、かしこさ、みのまもり、すばやさ、かっこよさにポイント2ずつ」


 ステータスが変化する。


 俺、案外やっていけるかも。


「水神!」


 急に海斗の右手から水が生まれた。その水はどんどんと大きくなり、近くの木々ごと周りにいたモンスターを吹き飛ばした。


「やったぁ! 俺もレベルが上がったよ!」


 子供のようにはしゃぐ海斗。

 

 確信した。俺がチヤホヤされることはないな。

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